昭和の風林史(昭和五十年四月四日掲載分)

踏み踏み相場 手亡のミステリー

手亡のミステリー。一万三千円乗せからが本格的な相場展開。四千円抜けもあろう。強気、強気。

「今朝越えた山見て休む日永哉 松舎」

二本ほど原稿を書いて上京していたら手亡相場が暴走しだした。方針は、底入れ→強気一貫であったから、どうという事でもないが、焦点が少し呆けた。

そこでピントを絞って今の相場に焦点を合わせてみよう。

弱気筋の唱えていた乱暴な弱気論の裏側が出た格好だ。

〔乱暴な弱気論〕=ピービーンズを渡す→受け手がない→相場が潰れる。

山大商事の関口氏の表現をかりると〝潮の流れが変わった〟という事になる。潮の流れが変わると、カードの裏側が表になる。

〔乱暴な強気論〕=手亡のミステリーとサブタイトルをつけてもよい。

大取り組みの潜在エネルギー→その中の微々たるピービーンズ→渡すものがあれば受ければよいじゃないか→ベトナムの避難民救済用の需要も出よう→ピービーンズ相場が底入れして反騰すれば、むこうで転売するだろう→定期の売りヘッジは場勘で攻められよう→ミシガン地方の天候が崩れている(慢性的洪水)→北海道も発芽期の降霜予想が出ている→先高人気なら受け手もふえる。

筆者は一万円棒上げ可能の手亡相場と、きのうの紙面で書いている。この原稿は31日の時点で書いた溜置き原稿だが、そのぐらい雄大な相場構想を持って対処すべきだと思っている。

〝三川崩れ〟の鬼線は一万三千円(先限)乗せからが相場と見ておけばよい。

三千円から四千円にふっ飛んで行く可能性もあるし、時に四千五百円までの鋭角V字返し、子規の句にあるような「行き行きてひらりと返す燕かな」。二千五百丁下げの二千五百丁上げ、その行程五千丁の大のこぎり相場かもしれない。

ともかく一万三千円以下の値には紙を張ってなかったものとして考えると判りやすくなるし、手亡のケイ線逆さにして二メートル離れて眺めれば、行くべきところは判然としている。

(なお念の為=手亡一万円棒上げ説はパニック値一万円がつけば、そこから一万円高、即ち予想される十一月限未来の高値二万円を言う)。

一方小豆相場も六月晩霜という赤い目印の杭を打ち込んだ以上行け行けだ。

 ●編集部注
 虚仮の一念岩をも通すを地で行く世界である。

 虚仮とは「愚か者」の意。書いている本人に自覚はないが、当時この逆の見方をしている者達には虚仮にされていよう。

【昭和五十年四月三日小豆九月限大阪一万七四四〇円・七〇円高/東京一万七四一〇円・一二〇円高】