昭和の風林史(昭和五四年六月二八日掲載分)

陰極圏内突入 いつの日か大底を

ここから安いという事は、相場様が陰の極にそれだけ接近するということである。

「泡盛や汚れて老ゆる人の中 友二」

ストトン相場である。

投げが投げを呼ぶ。下の値段に抵抗力がない。

売り方の利食いで、一時的に値は支えられるが、すぐに新安値を追うという荒涼としに相場
だった。

現物が売れていない。不需要期ではあるが、まったく売れ行きが悪い。

産地の天候は、作柄に申し分ない。作況従ってまたよろしい。

こうなると買い玉殲滅(せんめつ)戦である。

夜が明けると安いこの小豆相場、遂に期近限月は一万八千円台である。

売り方が、夢にまで見た一万八千円相場。

物が売れなければどうしようもない。まさしく余り物に採算なしである。

生産者が、こんなに安い相場を眺めてたら、畠で成育中の小豆を引き抜きたくなるだろう。

人気面は、ぼつぼつ下値にとどくだろうと警戒的になった。

早やければ七月七日と言いたいが七月七日は第一土曜で休日になる。遅ければ七月25日の天神底か―と。

ここで一ツ気にしておかなければならないのは、選挙の年だ。自民党の先生や社会党の先生が、小豆で儲けて選挙に勝とうというスローガンを考えることだってある。

ここから売って選挙資金をつくれるわけはない。

買いから入る。安値で玉を仕込む。時期を見はからって、ホクレンに小豆のタナ上げ30万俵などの発言をさせる。

いや、もっと政策的に効果の上る発言を出来る立場の人だっているはずだ。

北海道農民のために。

輸入小豆を入れないとか外貨割当ての削減とか。

相場内部要因が、投げるだけ投げ尽して改善されておれば、値段としてはまずまずのところだけに、相場の流れは急変する。

『小豆を買って選挙に勝とう』―と、腕のある商品セールスマンなら自民党の有力な先生に接近することだろうと思うが、どんなものだろう。

いや相場が安いに越したことはない。一片の贅肉もないというほど下げ尽し、投げ尽したところが底になる。

相場に大底が入れば、相場様は、買わせずに高くなる。悪材料のドブ漬けのような相場でも奔然と出直っていく。

それが、いつの日に到来するか?である。あまり遠い先ではないと思う。

●編集部註
 このようなロジックが通用するのは、市場が健全である証左である。

 選挙ではないが9・11直後の米国株式市場では、同じようなロジックで「米国株式を購入しよう」という運動が、著名人から自然発生している。