迷わすところ 大直り初期の現象
早耳の早倒れというが、早見えの早倒れでもある。小豆は出直り態勢の序の口である。
「寝冷して韮の雑炊たきくれし 恒明」
天井売らず、底買わず―という言葉がある。
相場の天井や大底は、あとから、あゝあそこが天井だったのだなとか、やっぱりあの値が大底だったか―と判るもので、一文の上値もない素天井やドン底というものは、売れもしなければ、買うことも出来ない。
要は、少し間を置いて、天井を打った、大底が入った―が判ればよいのだ。
あまりいい値段を売ったり、買ったりすると、まま災いになる事がある。
大天井を売ったり、大底を買うのは、僥倖(ぎょうこう)である。好運だったと思わなければならない。
大天井を売った玉や大底で買った玉は、どうしても利食いが早くなる。
いまの小豆相場を見ていても、大底を強気した人は利食いしている。
それが、利食いだけで済ませておけばよいのだが、手が、早い目、早い目になるもので、相場が愈々上昇期に入る段階で売りまわったりするものだ。
相場の呼吸と、自分の手が少しずつズレていく。
得てして相場に大曲りするのは、よく見えていたあとである。
実際は見えているのだが段々早見えしすぎて、相場とのタイミングが合わなくなる。少し間をもたせればなんの事はないのだが、心に焦りを生ずるから、ますます呼吸が合わなくなる。
本間宗久伝に、損したあとでも利食いしたあとでも少し休め―と教えているのは、要するに、そこのところを言っているのだと思う。
今の小豆相場は底入れして、出直り段階である。
いい値段を買った人たちは早々と利食いしている。
これらの人たちが、再び買い直しを入れてくるのか。それとも、これからの高値を売ってくるのか。
一方、安値ドン底をドーンと売った人もいる。内心しまった―と思っているかもしれない。相場の足が少々違うぞ―と感じておれば。
しまったは仕舞えで、安値を叩いたが、この相場、単なる戻りでなく、大直りだと直感すれば、ドテン買いにまわって充分間に合う。
小豆先限の三千五百円から四千二、三百円あたりまでは、前述したようなさまざまな思案と思惑が交叉するところであろう。
筆者は、とりあえず三千丁高と見ている。二万五千円あたりの値を取りに行く動きと判断する。
●編集部註
相場は意地悪である。
中長期の流れは正解であっても、短期的な方向は不正解になる時がある。
故に日柄が重要になる。