昭和の風林史(昭和五四年九月十三日掲載分)

市場下げ賛成

〝機〟到来を待つ!

◇…市場は北京商談を警戒、産地からの売り声に怯えている。素直に下げればまた妙味が…。

「だらだらとだらだらまつり秋淋し 万太郎」

◇…東京港区の芝大神宮の例祭は九月11日から21日まで行なわれ、境内に生姜を売る市が立つので〝生姜市〟ともいう。また、お祭りが十日間も続くので、だらだら祭と言う。

相場する人は、このお祭りだけは寄りつかぬほうがよい。この境内で売る生姜を〝めっかち生姜〟とか〝目くされ生姜〟などと言った。目を病む参詣人が多いことからそう呼ばれたらしい。

相場を売っている人なら、だらだら祭り結構じゃないか。目くされ生姜面白い。私ゃ相場が見えてません。

そう思う人は、お賽銭をはずんでくればよい。

◇…第三土曜の15日が敬老の日。この日だけは老人を一応いたわるという変な日である。取って、つけたような敬老精神など、老人にとっては有り難くない。本来このようなものがあるというのがおかしい。普段老人を大切にしていない証拠である。

◇…近頃駅のホームや階段に盲人用の、あれはステッキでさわっていけば安全という凹凸した黄色のラインが引かれたり、四ツ辻の信号に盲人用の音で区別出来るシグナルが設置されているが、あれにしても中途半端で変な具合だ。見せかけの親切とでも言おうか、敬老の日のように、取ってつけたように思えて仕様がない。ないよりはましだというところであろう。

◇…ところで相場のほうだが市中現物の軟化からだらだらと垂れ込んできた。産地では畑の早生系小豆はすっかり色づいて乾燥、収穫作業もこれから本格化する。農家にすれば新穀の作柄に不安を抱いているうちは、ヒネも大事に扱うがここまでくるとそうも言っておれずつなぎも増えてくる。

◇…他方、北京での中国小豆商談も神経質な市場である。下期のワクも決まらず、中国側の意向を打診する程度―とはいえ、ある程度の成約は最初から判っていることで改まって騒ぐこともないものの、ザラ場での気配、あるいは新穀の売り声(九月末~十月初め着レールで二万五、五〇〇円)に怯えている風である。

◇…果して弱気の指摘するように下げの中段もみ下放れコースか、それとももみ合いの域か微妙な人気、居所ながら、弱い材料ばかりは続かないもの。

実需筋は安い道産ヒネに食指を動かし始めてきた。次期ワク削減も多分にあり得る話である。

●編集部註
先月まで東京外苑前で「ダイアログ・イン・ザ・ダーク」という、暗闇で歩いたり食べたり触ったりするワークショップが行われていた。

全く見えないと、それ以外の感覚が鋭敏になるのだという。凹凸や特別な音も非常に有用なのだとか。