昭和の風林史(昭和五四年十月四日掲載分)

どこで売るか あわてずに待機中

人気の弱い割りに強い小豆だが、所詮は、どこで売るか―の相場。待機して売り場を探すところ。

「秋の暮わがしはぶきもさびにけり 露伴」

英国の国際戦略研究所のクリストAバートラム所長が、一九八〇年代は〝不快な10年になろう〟と世界情勢を分析している。

ソ連は資源とイデオロギー問題に直面し、周辺国への戦略を一段と強化しよう。
国際秩序の喪失が中東、アジア、アフリカなどの第三世界の地域紛争を引き起すだろう。(日経ビジネス9・24)。

イラン問題研究家のジェームズAビル教授は、80年代は中東諸国に政治的安定や社会的平和は期待出来ない。中東諸国は今後さらに革命の騒ぎにさらされる―と。(同)。

金価格はパリで一オンス四百五十㌦を付けた。五百㌦もあろうといわれる。

国際商品は、無気味に鳴動している。

シドニーウール。シンガポールゴム。ロンドン砂糖。シカゴ穀物。それらの動きは日本の商品取引所の上場商品に、もっと敏感に連動してもよいのであるが、国内相場を見ていると隔靴掻痒の感である。

これは、要するに日本の商品取引所の地盤沈下からくるものである。

本来言えば、80年代こそ商品取引所の時代であるはずだ。戦争、革命、資源パワー。オイル。インフレ。通貨不安。人口増。天候不順―。そのどれをとっても先物取引の機能をフルに活用して、危険をヘッジするしかない。

ところが先物業界はきわめて無気力、怠惰に陥っている。

伝え聞くところによれば通産省の細川室長は、商取業界は(いまのような状態では)五年と持つまい―というふうな、絶望的見方をしているようである。

これは過日、東繊取での清水正紀氏と細川室長とのきわめて感情的な、しかもエキサイトした、やりとりなどとは関係なく、細川氏がかなり以前から持っていた業界に対する見方である。

清水氏にすれば、室長はなんにも判っちゃいない―と思っているだろうし、細川氏にすれば、清水さんはなんにも判っていないと絶望しているはずだ。

ここらあたりに商取業界の不幸がある。業界と主務省の考え方が、まったく異次元で、しかも方向がすれ違い、お互いに、なにも理解していない。

本来、活気を呈してもよい先物市場の、現在の姿を見るにつけ、複雑な思いに沈潜するのである。

小豆相場のほうは売り場待ちの段階と見る。

●編集部註
 不快な10年は、頭に〝強国にとって〟という言葉をつけるとしっくりくる。

 米国はパフレヴィー朝が倒れ、在イラン大使館が襲撃、占拠される。

 ソ連はアフガンに侵攻。泥沼の戦いに突入する。

 これらは現在『アルゴ』や『チャーリー・ウィルソンズ・ウォー』等の映画で知る事が出来る。