昭和の風林史(昭和五十年五月二六日掲載分)

伸びきった腰 ぶった斬れば…

月曜の伸びきった手亡の腰をぶった斬れば、S安である。買えば買うほど手亡相場は悪くなる。

「慈悲心鳥霧吹きのぼり声とほき 秋桜子」

穀物市場は播種期に入って、産地の天候不順から播種遅れが現実のものとなり、早くも大荒れの様相だ。

目下のところ手亡に人気が集中している。

静岡筋と、いままで表面だって派手な動きをしなかった桑名筋が、にわかに市場で話題にのぼる手亡を見せ、天候相場の開幕を告げるかのうような、打ち上げ花火、手亡期近のS高二連発で、人気は、いやがうえにも盛りあがった。

一般人気は、小豆より足の早い手亡に集中している。

手亡相場の大勢は、これは作付けが少なかろうと、天候不順であろうと、一巡買われたあたり(踏みも出て)、再び輸入業者の狙い撃ちにあう運命で、大量のピービーンズをかぶる結果になる。

売り方は、あえて目先の激しい買い方攻撃に逆らわず、腰の伸びきるのを待つ姿。

大衆筋は投げたあとの安値を売り込んだ。その裏目が出たところである。

ここで、さらに手亡が買われれば、輸入作業は急進展して、またとない売り場を構成する。

買えば買うほどピービーンズの輸入量が増大する。

手亡は売りである。早ければ月曜上寄りしたあと強烈叩き込みのストップ安が入ってもよい相場である。

取り組みが大きいだけに動きとしては、どうしても行き過ぎがある。出来高も加速度がつく。しかも仕手介入という華々しさもあって熱狂のウズが巻くわけだが、伸びきったこの相場の腰は、必ず叩き折られ、ストップ安がくる。

手亡に反しても小豆は商いが、まだ弾まないが、それでも取り組みは漸増している。

線型も先限引き継ぎ線は九カ月ぶりで新値を買った。

この事は、前途に大きな相場展開を物語るものだ。

主産地帯広は例年20日までに大豆の播種が終わるのに7日~10日の遅れで小豆もそれだけズレ込む。

市場人気は手亡がチカチカしているため、どうしても手亡に目移りするが、天災期相場の本命は、やはり小豆である。

手亡の伸びた腰をぶった斬って小豆を買おう。

●編集部註
 相場に正解はない。

 粘った方が良い時もあればそうでない時もある。

 ただ言えるのは、相場に曲がっている時ほど、銘柄であったり、手法であったり、何かしら拘泥しがちであるという事か。

 柔らか頭がカチを生む。

【昭和五十年五月二四日小豆十月限大阪一万七五八〇円・変わらず/東京一万七六二〇円・一一〇円高】