昭和の風林史(昭和五四年七月三十一日掲載分)

強い基調不変 八月は三万円時代

保合って押し目の役を済ます事もある。買い玉を常に保有していなければ八月は暑い夏になる。

「草刈りの笠のみ動く夏野哉 松水」

あんまり勢いよく騰げたため、小豆相場は時間調節にはいった。

時間の調節は、待望の押し目を入れるか、横に保合って押目の役を済ませるか。そのどちらかになるだろうが、八月新ポに一月限が上ザヤを買うため、押し目待ちに押し目なしになるかもしれない。

売りたい病気がなおらない人にすれば、騰勢が緩むと、やはり売りたくなる。その反面、売るのは怖い。売りたい病気の症状は暴落するように思えてしようがないのが特徴だ。

買い方にすれば、今まで何回転かして、力がついているのと、相場が見えているのが強い。

ともすると、買い玉がなくなっている(利食いしてしまう)。

空間マドの分ぐらい押し目が入って、安いと結構だが。買う気で待つあいだは押してくれない。

だから、押してよしという態勢で構える。

買い玉を常に保有し、もし安ければ玉を仕込む。期待に反して、押し目がなければ、高いところを買い乗せする。

見ていると、強気筋は安いところを、すかさず買っている。そしてこの買い玉は遠からず利になるだろう。弱気筋は、追証というハンディを背負っているから、売り攻勢にも出られない。仮りに売り叩いて安い値にしても、涼しい顔で強気に拾われてしまうだろう。勝負にならないのである。

そうこうして、時間調節を済ますと再び相場は奔走するだろう。

八月中に一月限で三万円相場を展開することになると見る。一月限は、これは大変な限月である。古品の供用が出来ない。本年産が凶作ならば、輸入品を持ってくるしかない限月である。

ところが中国も、台湾も輸出しすぎたきらいがあるだけに古品の在庫は少ないと思う。

中国の今年産の作柄がどうなのか。それは、これからの問題である。台湾は、日本の相場を見て、大増産になるだろうが、出回るのは来年二月時分だ。

ともかく60万俵余るという考えと、加糖アンの圧迫感で、骨まで弱気の病気にかかった人は、八月はことのほか暑い夏を迎えよう。

11、12月限の七千五百円抜け。10月限の六千円あたり。楽なのではなかろうか。「理くつは、あとから貨車でくる」。その貨車を待つ時間調節だった。

●編集部註
 買いは「熟慮断行」だが、売りは「断行熟慮」であると相場巧者に教わった。逃げ足さえ早ければ、この思考は間違っていない。