昭和の風林史(昭和五四年七月三日掲載分)

小豆は買いだ あとから硬材出る

本年後半は小豆相場が活躍するだろう。小豆は買いである。買い材料はあとから出現する。

「冷酒の利いていよいよ舌足らず 草城」

相場というものは、底がはいってしまうと不思議なもので、どんなに環境が悪く、どんなに悲観視されていてもジグザグとりながら上昇していくものである。

出直り初期は、市場が弱気になりきっているだけに、戻り売り人気で売られもするが、売られるほどに相場は力をつけていく。

今の小豆相場は、千丁、千五百丁の戻りは、これは誰でも自律反騰として考えている。

しかし相場の本質が戻りの範囲を越えて、出直りの体質に変化しておれば、水準を高めることにより力をつけ、それ相当の材料がまたついてくるから、気がついた時分は、おやおやの相場になる。

売るだけ売った。投げるだけ投げた。お目目の前が、まっ暗になるほど悪い材料、売材料を聞かされた。だから、知ったらしまいの相場になっている。

悪材料織り込みなのだ。

なにかは知らないが、三千丁戻すように思う。

人様は知らなくとも、相場様は知っている。

値段を押し上げる材料が目白押しに並んでいることを。われわれは、それが判らない。産地の天候かもしれない。新しい仕手の介入かもしれない、ホクレンの政策かもしれない。

それが、なにであるか判らなくとも、相場を見ていると、大底が入ったことが判る。

徐々、急速に高くなろうとしとしていることも判る。

よく、相場は相場に聞けという。小豆の月末三本の日足線は、相場が変化したことの判然としたシグナルである。

本年後半は、小豆相場が再び人気を集めることになるだろう。

外貨ワクを減らし、輸入品の圧迫を解消する動きも出てこようし、北海道の作柄も土用のお天気を見ぬことには、なんとも言えない。

そして、安値で、あまりにも売り過ぎたことが新しい感覚の仕手、いわゆるニュー・ヤング・ライオンズの狙うところともなりかねない。

市場の仕手は新陳代謝する。老兵は消え去る。ヤングマンが登場する。

彼らは、輸大戦線の勝利の勢いに乗って小豆市場に主力師団を投入してくるかもしれない。

小豆市場は、安値を売り過ぎているから、三千丁ぐらいの強行突破は、さしたる兵力の投下を必要とせず簡単に実現する。ともあれ小豆は凄くなろう。

●編集部註
 歌は世につれ、世は歌につれ―。

 西城秀樹が「素晴らしいYMCA」と歌ったのはこの年の2月からだ。