昭和の風林史(昭和五四年七月二十八日掲載分)

“夢中戦艦栗田” アンドロメダ行き

相場の性格は今までと違うものになった。アニーよ銃をとれ、相場はこれからである。

「たまさかの人なつかしや一夜鮮 梅東」

小豆市場に栗田艦隊出動の報伝わるや相場奔騰、売り方狼狽す。

「アンドロメダ行き宇宙戦艦・栗田」―とでも言うべきか。いや三万六千円行き夢中戦艦・栗田かもしれない。

彼は必ず、小豆市場に出撃してくると思っていた。本年前半の戦績は、残念ながら牛追いである。

失地を挽回すべき商品は今や小豆しかない。

まして彼の小豆相場に対する思いは?悲願〟でさえある。一度でもよい。小豆で勝利したい。

彼の今度の小豆投機は成功すると思う。

ただし、市場のルールを守り、過剰投機にならなければ―だ。

『風林が強気方針だから、今度は幾ら栗田が、あばれても、去年の後半のように、仕手排除、仕手批判はするまい』―という人もいるが、相場の強弱と、市場ルールの厳守は別である。行き過ぎたルール破りには、強弱をはなれて攻撃を加える。

〝夢中戦艦・栗田〟の出現で、小豆相場の波動は今までの流れと、まったく性質を異にするだろう。二万五千円台から六千円台で玉を仕込むという事は、少なくとも一万円幅。即ち、アンドロメダは三万六千円。そこのところに目印の旗を立てなければなるまい。

一方、弱気の病気、売りたい病気にかかっている人は、二万七千円、八千円抜けから踏みにはいるだろう。この病気にかかると申し分ない押し目が、天井に見えるから、どうしようもない。毎節が天井に見えるあいだは、やまいコウコウである。

伸び伸びした週間棒と北海道先限の粋な日足線を見ると、この相場は二万七千円は買い切って、あとはどこで押し目を入れるかという、買い方にとっては非常に楽な戦いになる。

あと、売り方が、どのあたりで壮烈に憤死するか。売り玉弔の遠いラッパを聞くまでは、前進あるのみだ。

“理くつは、あとから貨車でくる”。八月に入っての産地天候は、冷害凶作を決定的なものとするだろう。土用に入って、真夏日というものを見たことがない。アニーよ銃をとれ、まだ間に合うのだ。

なぜなら、急伸しているが熱狂していない。こういう相場が一番怖い。八月には三万円相場の展開を見るだろう。値頃観無用の時である。

●編集部註
 当たりやにつけ、曲がりやに向かえは相場の常道である。ましてや小豆相場には罫線殺しと呼ばれる逆張り筋もいた。