君は底を見た 翻然買シグナル
悪魔の六月が終った。七月は小豆が反騰する。小豆は底を入れた。強烈な買い線が出た。
「河骨の花に神鳴る野時かな 虚子」
シカゴは制限値幅を更に拡大して玉が、はまるようにするが、日本の制度は、まだそこまでの考えはない。
買い大手筋が投げ、三晶が利食うけれど、売り玉が残る。先限で八百七十円幅が消えてしまった。一枚の玉で二十一万円替えである。
10月限を残して全限が一代の安値だから、輸大市場で強気をした人は、悪魔のような六月だった。
一応、月曜あたりで売り玉も利を入れにくるだろうから、投げと利食い玉で出来高は増大し、本年前半の戦いの終戦処理にはいるわけだ。
投機筋は随分いたんだ。大手投機家も、かなりの打撃であろう。
このような相場のあとは市場が荒廃する。
まるでダムが決壊したような輸大市場を横に見ながら、小豆相場は、違う表情をしている。小豆の相場は、先にダムの決壊を見ている。投げる玉は投げ尽し、とどく値にとどいて、隣の市場がどうあろうと関知しない心境にある。
そのような動きから小豆は底を入れた―と喝破する人も出てきたに。多田商事で大きな顧客を持つ営業の加藤さんなど今回の輸大の天井をいち早く感じ、また小豆の暴落を予見して西田昭二氏に言わしめれば『加藤さんは日本一の営業マンです』と感嘆することしきりであるが、加藤氏は小説家の黒岩重吾氏に商品相場をすすめ、黒岩先生をして商品は難かしい―となげかせたこと幾たび。
かつては伊藤忠雄氏、あるいは今は亡き西山九二三氏の薫陶も得、心苦辛酸を経て今日の地位を築きあげた。要するに彼は相場の虫である。そして真面目である。常に前むきである。非常に熱心である。自分で、物を考える目を持っている。そして情報が早い。顧客に信頼されて当然である。
なるが故に、西田昭二氏をして『加藤さんみたいな人が(多田商事に)五人もいてくれたらな―』と言わしめる。
その当り屋の加藤さんが、小豆は大底を入れたという。
先限の安値は二万二千二十円。一番安い引けの値が二万二千二百二十円。数字が四ツ重なる珍しい現象だった。
下から食い込む陽線三本は出直りのシグナルである。
戻り売り人気が強いだけに、存外大きな反騰を見せるだろう。週末で小豆は強力買いの線をつけた。
●編集部註
商品先物取引の起源は江戸時代の日本とされているが、現代商品先物取引をけん引していたのはシカゴである。
CFTCが生まれたのが1974年。設立から5年目に入り、6月下旬から始まったシカゴ穀物市場の崩落で試練の時を迎える。