昭和の風林史(昭和五四年七月五日掲載分)

安値売り過ぎ 出直りの若い相場

三千丁をストレートにいくか、押したりしながらいくつかの違い。底入れ→出直りの若い相場だ。

「川上は茂りに暗し河鹿鳴く 月斗」

相場は、どのように悪い材料が言われても、下げるだけ下げてしまうと止まるものである事を、今の小豆が示している。

不思議なもので、底が入ると、誰が買うでもなしの相場でさえ、反発し、おいおいと硬材料が湧くように出てくる。

線だけで今の小豆相場を論ずれば、三千丁高は自然の理になる。

もう少し日柄が必要だ―という論もある。

あるいは、戻りに限度があって、戻り売りでよいと見ている人も多い。

しかし、人々が期待したり、想定しているふうには、なかなかいかない。

底が入った相場なら戻りではなく、出直りである。

底が入ったと判断するのは、下げ方がきつかったこと。いわゆる値幅の整理が出来たことと、二月16日天井からの日柄が充分であること。そして、買い玉の整理が進み、安値をドンと売ったという内部要因。

それらの現象から、底が入ったと判断する。

では、出直り相場がどこまで行くか。

それは判らない。判らないけれど、安値から三千丁は高くなってもおかしくない。いや、あるだろう。

三千丁を一本棒でいくか、押し目を浅く入れたりしながらいくか、それは市場人気の気分次第であろう。
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安値を叩いた人は、W底を期待する。

もう一度安いところが欲しいのは、そのあたりでドテン買いのポジションに転換したい。

ところが相場というものは、なかなか意地悪にできていて、期待通りに動いてくれない。

確かに、いま市場で言われている材料からすれば、戻り売りの相場になろうが、その材料にはもう抵抗力が出来ている。

そしてこれから先に予測しない強い材料が出現すると、市場は、まったく無防備、免疫性がないからその時は、そのショックでストップ高にもなり、売り玉が場勘で攻められ、これが踏まざるを得ない―という、今の段階では誰も考えてもいないようなことが起る。

そのような展開を、する可能性が強いということを今の相場が暗示している。盛んにシグナルを送っている。そのシグナルを素直に受け止めることのできる人と、相場の信号が判らない人と、そこに強弱の違いが出てくる。

●編集部註
 相場に関係ない話だが、その後の生活様式を変える商品がこの頃生まれた。ソニーのウォークマンだ。

 CD、MD、MP3とメディア媒体はいろいろ変わっていったが、この商品が世に出るまで「自由に音楽を持ち歩く」という概念はなかった。