昭和の風林史(昭和五四年七月十日掲載分)

買い姿勢一貫 本年後半大相場が

本年後半の小豆市場は、買い玉を常に保持している人にとって、毎日が楽しい日々になろう。

「ふるさとに荒き布目の冷や豆腐 恒明」

小豆相場の流れが変化していることは、およそ誰もが感じるところである。

ただ、このまま一本調子に直っていくとは見ないだけで、もう一度、押し目を入れて駄目底をとるだろうと考える人が多いようだ。

要するに、底は入っているが、当分のあいだジグザグして、それから出直る―という観測である。

相場が下げている時、大倉商事の川村雅宣氏は『この小豆二万二千円の近くで止まる。それ以下の値はない』と断言したが、まさに相場はお説の通りの動きをした。

彼は『この小豆は八月の声を聞いてから怖い動きになるでしょう。七月の基調は強含みで推移し、大きく揺さぶるかもしれないが、八月から買い一貫の大相場にはいっていく』と自信を持っていた。

先般紹介した多田商事の加藤さんは、『とりあえずお客さんに買い玉利食いしていただいたが、姿勢としては買い場待ちです』と。押し目待ちのようだ。

今では、現物を相当量手持ちしている本田忠氏の動向が業界関心事であるが本田氏も、ぼつぼつ相場の流れが変わろうとしている事を、『どうも、そんなふうだね』―と。

本田氏は、下げ相場を売って、勝利してきた。定期市場の売り玉を引きあげて現物をロングするポジションに変化するかもしれない。

市場は、まだ決定的な強気材料を手さぐりで探している格好である。

しかし、大勢的には本年後半の小豆相場は、買い玉を持っておらねば話にならない―という感覚は掴んでいるみたいだ。

筆者は、総選挙を控えている時だけに、選挙資金手当ての場として、小豆市場が恐らく利用されるだろうと思う。

いまは、安値で玉の仕込み中といえないだろうか。

大底が入った商品である。産地の気温が低めに推移してきた。60万俵の供給過剰が言われている。外貨ワクの削減という農家保護の政策が打ち出せるタイミングを持っている。安値で売り玉が掴まっている。高値の因果玉が整理された。

思うのである。もう一回安いところがあるだろうの“だろう”は、ないかもしれない。いまの水準を買って、仮りに安くなっても五、七百円であれば、そこでまた買えばよい。買い玉は本年後半の投機家必携のパスポートである。

●編集部註
 数々の相場識者の声がここに掲載されている。

 よくよく注意して読むと各人とも相場の「日柄」「値幅」「波動」を意識したコメントになっている。

 単語を変えれば、潮の流れを読むベテラン漁師や、一級品をセリ落とす魚河岸の目利きのコメントと何ら変わらない。