昭和の風林史(昭和五四年九月七日掲載分)

売り場を狙う 上には繋ぎ玉待機

◇…小豆相場は霜の材料などで買い人気が沸騰するような場面を待って売れば判りやすいと思う。

「大江山降り出す雨に桔梗濃し 青邨」

◇…まだ、高値?みの玉が投げきっていないという。

かと思うと、六月末の安いところを売った玉を、七月の急騰相場を辛抱して、いまもって安値売りのままの人もあるようだ。

なんと言うか、こうなると筋金入りである。

◇…利のある玉は利食いするから、建玉という建玉は、すべて引かされていると考えてもよい。

◇…千円ほど戻してくれたら―という期待に応えて反発した。

需要最盛期だし、輸入小豆の下値が頑強。また、生産者団体による雑豆輸入ワクの削減運動など、硬材料として受け取られた。

◇…これで産地の気温が冷え込んで、早霜のニュースでも流れれば、千円戻しが千五百丁、うまくいけば二千丁戻しのコースに乗るかもしれない。

そうなれば商いも弾む。なにせ、八月の出来高は各商品とも落ち込んだから、九月決算月は、各社とも商いに精を出さなければならない。

◇…輸大でもそうだが、相場が上向きにならなければ商いはふえない。

さりとて、やたらと買えば、取引員自社玉のポジションを見ても明らかなように、輸大も小豆も圧倒的に売りが多い。

長い目で見れば、商品相場は売りが有利なのだ。

◇…ところで、観ていたら、ジンマシンが出そうだ―といらいら病だったタイガースファンは、対巨人戦で13も点を入れて、なんとも気分が爽快そうな顔をしていた。勝負ごととは、まさしくこんなものかと思わせる試合で、相場にしても一寸先は闇。

だから失意の時でも悲観・絶望するなかれ、得意の時、驕慢になるなかれである。

◇…半ば、あきらめていた小豆相場の買い玉だって、相場が止まるところにくればピタリと止まり、止まれば止まったで反発もする。

こうなると、必らず強弱材料も、強い材料が出現する。理屈はあとから貨車でくるというわけだ。

◇…いうなら、人気の裏である。万人が万人ながら弱気なら、阿呆になって買いの種蒔けという言葉もある。さて、戻ったら売ろうの、たらであるが、戻り足の強さによっては、強弱観が変化するのが市場の顔である。材料によっては、戻りでなく出直りだ―となるかもしれないが、鬼より怖いホクレン様が売り場を狙っている。

●編集部註
 戻してくれたら―、と願って本当に戻っても、そこでハイありがとうと退散する人は意外に少ないのが相場あるある。
 ひょっとすると、ここで形成逆転できるかも、と夢を見てしまう。
 そのうたかたの夢が、身ぐるみを剥いでいく。