昭和の風林史(昭和五四年九月三日掲載分)

灰色の九月へ 待つ間に値崩れか

◇…天候相場は不発に終って、これからは需給相場になる。雑豆輸入商社とホクレン主導の相場だ。

「裂けそめし種の力や椿の実 季発」

◇…小豆の作柄は十勝管内で反当り二・七三俵(東京商品取引員調査部会予想)ということで、平年作を上回っている。

◇…当初、作柄が悪いという事で二万七千六百六十円(大阪)を買った。

しかし、作柄が回復したため、三千丁の値崩れになった。

◇…去年や、一昨年の場合、買い方に大きな仕手が介在していたから、収穫の見通しが(去年大豊作。一昨年平年作を上回る)判然とする時点では、暴落に次ぐ暴落で、仕手崩れの、ひどい下げかたをした。

◇…今年の場合、仕手というほどの買い方はいなかっただけに、大衆買いの整理ぐらいで、その幅三千丁の下げで止まっている。

◇…これで、年に一回の小豆相場のお祭りみたいな天候相場は終った。

◇…これからは、輸入小豆の材料に関心が移る。
北京商談。次期外貨ワク秋の交易会。そして台湾小豆の作付けなど。

◇…それと、秋の需要期に向う。末端の売れ行きも涼しくなるにつれて活発になる。
しかし、小豆の現物がよく売れるといっても、相場を大きく押し上げるようなことは、めったにない。

◇…相場は、仮需という思惑が、理性を失うほど強烈に入らない以上、あくまでもソロバンを重視して、突拍子もない値段は付かないものだ。

◇…これからは、どちらかといえば、需給相場であるから、値の動き方は地味になる。

そして、輸入事情が価格変動の主役になるから、どうしても雑豆輸入商社が市場をリードする。
ホクレンも、収穫の見通しを?めば、これまた巨大な売り仕手化する。

◇…このような段階に入ると、相場は、なにかの変化で一時的に高くなっても強張るのは、長続きしない。
要するに、高ければ売るしかない相場になる。

◇…オイルの問題や換物思想や、インフレ、あるいは為替という問題も、ほぼ織り込んで、今さら―の感が強い。

せいぜい、相場内部要因ぐらいであろう。市場人気が完全に弱気になりきって安値を売り込むという取組みになれば、ちょっとした材料で反発するが、それも瞬間的なものである。

◇…暑かった夏は短かった小豆で、これからは、長い売りの時代にはいる。新ポから崩れそうだ。

●編集部註
 この日の夜、6代目三遊亭圓生が急死した。その数時間後に上野動物園のパンダも死んだ。

 4日の全国紙朝刊では1面でパンダ死亡、3面で圓生死去の記事が掲載され「同じ死でもパンダが1面で、昭和の名人が3面とは何事か」と憤慨する人がいたという。