買い妙味ない 値頃感は通用せず
◇…小豆は買い妙味のない時期である。巨大売り仕手的なホクレンや雑豆輸入商社の前では手が出ない。
「稀といふ山日和なり濃竜胆 たかし」
◇…相場の上昇期は、相場が高いと出来高が増大し、相場が安いと出来高が細る。
逆に相場の下降期は、相場が安いと出来高は増大し、相場が小戻すと商いは細るものである。
◇…九月三日新ポ、ストーンと値崩れして、小豆の出来高がふえた。投げと新規売りである。
◇…北海道の作柄も、ほぼ見通しがつき、供給面は不安がなくなった。
◇…天候相場が終り、需給相場の開幕である。
下期雑豆輸入ワクに市場の関心が移り、北京商談や秋の交易会、そして台湾小豆の作付け動向。あるいは需要期における冷凍小豆、加糖アンの入荷などが相場の強弱材料になる。
◇…このような段階に入ると、相場の主導権は、雑豆輸入商社と、収穫後の小豆販売を担当するホクレンが市場の制空権を握る。
◇…ホクレンは、言うならば、現物を背景とする巨大な売り仕手である。
雑豆輸入商社は、攻撃的なヘッジャーである。
◇…この二ツの存在に、いかようにして未組織な投機家が対抗出来ようか。
当然、投機筋も環境に順応して売りポジションにまわる。
◇…相場が高くなるという要因は、当面、来週あたりに可能性を持つ北海道の冷え込み、早霜ぐらいである。この場合、取組みが、随分売り込まれていたならば、勢いよく相場は反発するだろう。
それは、内部要因による自律反騰である。
◇…しかし相場の基調というものが、供給面に不安がないという流れの中にある限り、外部要因による自律反騰は、短期間に終ってしまう。そして、戻しただけ悪くなった―という相場になる。
◇…考えてみれば、先行き妙味のない相場である。
いまの相場が、もう、かなり下げたあとの、日柄を十分に経過したものなら、ある程度の反発高というものも期待出来ようが、内部要因面から反騰出来るほど売り込まれた取組みでもない。
そして、高ければ、ホクレンあるいはヘッジ筋が手ぐすねひいて売るだろう。
仮りに相場を売り崩すという考えがなくとも、売り勢力と買い勢力を比較した場合、力の差は、あまりにも開き過ぎているように思う。値頃感などで買われるようなら、さらに相場は重くなるだろう。
●編集部註
この10年ちょっと前まで、売買手口は公開されていた。
つまり、どの会社がどの銘柄を何枚売買していたかが日々公開されていた。しかもこの時取引は板寄せだ。従って内部要因は今よりも重要な予測因子であった。