昭和の風林史(昭和五四年九月四日掲載分)

投機家不在の ヘッジャー主動型

◇…これからはヘッジャー主動、投機家不在という売りの時代の小豆相場だ。突飛高は売り。

「山裾のありなしの日や吾亦紅 蛇笏」

◇…小豆相場は、このあたりの水準なら一応妥当な値段でなかろうか―という空気であるが、九月相場は、意外に下値が深いように思う。

◇…いま、二万四千四百円の八百円というところで(一月限)押したり、突いたり、線型は〝ダンゴ型〟になっているが、これを放れて、糸を垂れるように、スーッと四千円を割るような事になると、辛抱していた買い玉の投げが出て、三千円そこそこまで値を消す相場である。

◇…まだ、いまのうちは産地の降霜という材料を控えている。

◇…早霜警報が出た。あるいは霜が降りた。小豆に被害があった―ということで相場のストップ高ぐらいは、あるかもしれない。

◇…だが、霜害などで買われても、存外、絶好の売り場をつくるだけだと思う。瞬間的、刹那的な、突飛高に終ると思う。

◇…なぜなら、高いところは輸入商社も、ホクレンも必ずヘッジしてくるからだ。

◇…小豆相場というものは、強力な買い仕手が介在していない時は、一年12カ月のうち、買い妙味があるのは、せいぜい一カ月である。あとの11カ月といいたいが、10カ月は売っておけば気が楽という相場になっている。

◇…このような相場の構造を知っておれば、どこで売るべきか―のみ注意しておればよい。

◇…もう一ツの注意事項は、満目総弱気の時である。

いまの場合、弱気が多いといっても、総悲観、総弱気にはなっていない。

一応、このあたりが値頃であろう―という見方は、まだ総悲観になったと言えない。

総悲観、総弱気の時は、必ず下値を言う。それもよもやと思うような安い値段(例えば二万円割れなど―)が言われるものだ。

◇…現在、市場は相場の千円戻し、千三、四百円戻しを考えているし、期待している。

この場合の期待とは、盛りのよいところを売ろうという、売り方の期待である。
だから、〝灰色の九月〟だと思う。

◇…長安夜半の秋、風前幾人か老ゆ。低迷す黄昏の道―。そういうところでなかろうか。

◇…ともあれこれからは輸入小豆に関する材料が優先される時期に入るだけに、ヘッジャー主動、投機家不在という様相を濃くする。

●編集部註
〝ヘッジャー主動、投機家不在〟という形は、既に40年近く前からあったという事になる。

「リスクを取る」という事と真摯に向き合う者を賞賛する空気を作ってこなかったツケが澱のように溜まり、我々は今身動きが取れなくなっている。