昭和の風林史(昭和五四年八月一五日掲載分)

お天気睨んで 押したり突いたり

閑だから元気がないのか、元気がないから閑なのか。お盆のあいだは仕方がないのか。

「大文字浪花につとめ京に住み 歩」

小豆相場の地合がおかしくなって、さあどうする―というところである。

産地のお天気が持ち直し、悲観されていた作柄が見直されようとしている。

軟弱な相場地合を眺めて、八月七日の高値は、あれは天井している―という人も出てきた。

ストップ高の次の日の寄り付きで煎れる者は煎れ、そして飛び付き買いした。

だから、あれで一応の不作相場を出した。

買い方に芯がないことも、この相場の上値限界を低くしている。

従って、産地天候が急激に悪くならない限り、戻り売りの相場になった―というわけである。

相場がチンタラ、チンタラ安いのを見ていると「あかんのかなあ」と思うわけだが、それが相場の人気というものである。

しかし、誰もが悪く見ているほど、相場の実態は悪いと思わない。

場が閑なのは、盆のあいだは仕方がない。

街なかも、車がほとんど減って静かである。

製造も、小売も卸も流通段階も、皆お休み中である。忙がしいのは、お寺さんだけである。かどのタバコ屋も薬局も喫茶店も貼り紙をして休んでいる。

穀取さんだけ忙がしいというわけにはいかない。

相場は、夏休みを済ませたら、また蘇るであろう。いまここで押しておいて、人気を迷わせたり、弱気にさせることは、多分、先に行っての活力になると思う。

先限引継ぎ線(大阪)で五千六百四十円高。

四分の一押しで六千二百五十円のところ。

三分の一押しなら五千七百八十円である。

千五百丁ないし二千丁の押し目を入れて、九月相場につながるという道順を考えている人もいるが、八月中旬以後の産地天候と作柄次第で押し目の幅が浅くも深くもなるところ。

筆者は、当限の三千円そこそこ、11限の五千二百円、12限の五干三百円どころ、先限の六千円そこそこで押し目は完了すると予想する。

去年、おととしと違って、今の相場は、基調が下げに向かっているのではなく、六月末底を打ったあとの出直り期である。

本年前半の高水準は、あれは昨年秋からの上昇相場の天井を構成したに過ぎない。その天井を抜いた新しい相場波動と見るから強気するのである。

●編集部註
恐らく、この頃、買い方はこの文章をすがり気味で読んでいただろう。

逆に、売り方はほくそ笑むか、せせら笑うかして読んでいたと思う。決して苦々しい感じで読んではいなかったと思う。

寸鉄くぎを指す剃刀の如き文章は書くが、遺恨を残さないのは芸である。