昭和の風林史(昭和五四年八月三一日掲載分)

売りたい強気 人気の変化を待つ

売ることを知った大衆が輸大の安いところを売り込んだから、これは反発するのが当り前だ。

「ここからが鍋屋横町赤とんぼ 章太郎」

小豆相場は、目先的には需要期控えで、下げ余地がない。

しかし、今ここで買い上げていく力もない。

自律要因などで戻すようなら、先行き輸入小豆が材料になるシーズンに向うから、戻り充分を見きわめて売るのがよい。

そういうところである。

産地のほうは、これから駈け足で秋に向う。気温は低くなっていく。

早霜の警報も出るだろう。

豆が畠の中にあるうちは、早霜予想一ツで相場は急騰したりする。しかし、たいがいその高値を掴むと苦労する事になる。

東西の取組みのほうは漸減している。

逆ウオッチのチャートでは、取組みが減りながら相場が高い場合は、買いの時代の終了を意味する。

取組みが減りながら相場が安い場合は、売り方針のままとなる。

いずれにしても、取組みが細るという事は、強気する側にとっては感心したことでない。

市場のほうは、輸入大豆に営業の主体をスイッチしたいところである。

輸大相場は、売ってさえおけばよいという考えが浸透したが、売っても売っても下がらんというところを売っても駄目だ。

売るのなら、人気が強くなった、盛りのよいところを売らなければ面白くない。

今の場合、輸大大阪九月限など、三千八百円でコーヒーカップの受け皿のような、たいらな底型になっている。

先限の四千四百円以下(大阪)は、過去半年間の相場で、買っておけば、全部利になっている。

目先的には七百円(大阪先限)あたりまでは予想出来るが、七百五十円抜けあたりで強材料が続出し人気が強くなるようなら、売り場が接近したと思ってよいだろう。筆者は、そのように思う。

円のほうは、ジリジリ安いが、総選挙が済むまでは、安いといっても、べらぼうに下げはするまいという見方がある。

今度の選挙は、自民党が圧勝するだろうと予測されている。しかし、円相場は自民党が圧勝しても、選挙のあとが本格的に安くなるという見方もある。

円が安ければ、輸入商品すべて価格が押し上げられる。繊維相場、ゴム相場が地合堅調なのも、為替相場との関連によるウエイトが大きいようだ。

●編集部註
時の総理大臣、大平正芳は9月7日に衆議院を解散。

消費税導入を選挙の争点とし、その結果、自民党は大敗してしまう。

ここから政局は荒れに荒れ、翌年衆参同時選挙を行う事になるが、参院選公示日である5月30日、新宿で第一声を挙げた直後から体調の異変を訴えて虎の門病院に緊急入院。翌月12日に急死する。

現職総理の死去は、五・一五事件で暗殺された犬養毅以来であったという。