昭和の風林史(昭和五四年六月二九日掲載分)

目先の底入れ 材料次第で反発大

小豆相場は、陰極圏内に入っている。材料の出具合では自律反発もきついものになりかねない。

「紫陽花や白よりいでし浅みどり 水巴」

シカゴ定期のS安で輸入大豆相場のS安が見えている前場一節の小豆相場が下げ止まり、二節反発したことは、一応小豆相場が下値の抵抗ラインに入ったことを小豆相場自から知らしめた。

輸大相場と小豆相場は一時期“相思相愛”型で連動したこともある。

しかし、小豆は輸大と離婚して、別々の道を歩んだ。

輸大がS安なのに、小豆が反発するというこの現実は、人気作用(附和雷同)よりも、商品特性による内部要因と、純粋相場波動の影響が大きくなっていることを物語る。

それは、シカゴにおいて銀の相場と大豆の相場は連動していたのが、ある時点から大豆は大豆、銀は銀。それぞれの商品特性で独自の動きにはいったのに似ている。

これは、相場が一ツの極限状態に達した時、人気作用を超越して、その商品の需給により独自の歩みに入っていく自然現象である。

人気作用が相場に最も影響するのは、相場を序盤、中盤、終盤と区分して中盤から終盤の中時分まででこの間の相場をグラフで見れば、上昇段階でも、下降相場でも、最も激しい。

いま、小豆相場は、下げの終盤に入っている。

買い方は白旗をかかげ、まさしく買い落城の安峠である。売り方は、利益を確実に確保するところだ。

新聞将棋の観戦記に「指し切り」とは、攻めれば攻めるほど相手の王の詰みがなくなることを言うと書いていたが、成程うまい表現だと感心したことがある。

相場でも、多分に、そのような場面がある。特に仕手の絡んだ相場に、そういう現象を見ることがある。

目下の小豆相場は、買い方は投了している。

にもかかわらず、ここからなお攻めて、盤上から相手の王将駒を取り上げて、残りの駒も全部取ろうというのでは、これはもう将棋でない。

勝負はついたのである。二万二千円を叩いて、下千丁を取りに行くということは、焼跡の釘拾いにもなるまい。というのは、仮りに下千丁の値があってもそれは瞬間的で、売り玉の利入れは出来ないものだ。

ここは、自律反騰を待つところであろう。

売り玉は利食いに専念するところでもある。

下げの末期段階は、長い線が横並びで高下する。

●編集部註
 この時東京小豆の総取組高は約二万五〇〇〇枚。その半年前が約四万五〇〇〇枚。買い方が刀折れ矢尽きた事がこの数字でわかる。 

 そして、この数字からもう一つの相場格言が連想される。そう「閑散に売りなし」である。