昭和の風林史(昭和五十年四月二一日掲載分)

必殺の売り場 万歳突撃玉砕か

大衆筋が手亡を受けたら相場はよけい悪くなる。いうところの万歳突撃玉砕戦法だ。必殺の売り場。

「べたべたと田も菜の花も照りみだる 秋桜子」

大衆店の手亡買い方が開き直った格好で期近限月の受け腰を表示しているため前二本は急反発した。

結論を先に言えば、ここで、いかような現象によるものであれ、反発、反騰する事は、あとになって、強い反動を招き、相場は必殺、なだれ現象を起こす。従って、この戻りは、盛りのよい絶好の売り場と言えるのだ。

大衆店の大手顧客筋はほとんどが買いポジションで、手亡相場がピービーンズに打たれている現象を腹立たしい思いで見てきた。

そこで品薄気味の期近限月を乾坤一擲、受けてやろうという挙に出てきた。大衆店の営業指導も、引かされ、引かされ、ここまで来た以上は、現受け作戦に出て、長期戦の構えに大勢をととのえる。これは当然の防禦方法といえよう。

だが、しかし、これはヒロポン現象である。

結果は非常に悪くなる。

受けた現物は、必ず定期に戻ってくる。

ましてピービーンズなど受けたら最後、持ちさげなるまい。

カナダ産ピービーンズ等の産地価格は低落傾向だ。輸入商社は、定期の戻りを見て、再び積極的な輸入作業に入る。

前二本は足の軽い戻し方をしても、長期限月はもうひとつ頭思いということを注目しなければなるまい。筆者に言わしめれば期近受けは、万歳突撃、玉砕戦法である。

手亡九月限の五百七十円。八月限の六百円。この値段が下げ幅の半値戻し地点に当たる。この近辺まで戻しきる力があったところで相場はそれ以上のものではない。

戻した分だけ、必ずシコリを残し、ひとたび崩れてくると一万二千円を深く割ってしまうだろう。

ともかく、先に行って悪いのは〝見え見え〟の手亡である。

大衆店の〝万歳突撃〟に幻惑されてはならない。

小豆のほうは閑散である。大勢的には長期強気方針でよいが、手亡が必ずひと崩れしようから小豆相場もその時、影響を受けるだろう。本気で強気するのは、それからでも遅くはない。当面は手亡の戻り売り、追撃売りだ。

●編集部注
当時、相場も経済も、高度経済成長の疲れを抱えていたようで、振り返る姿勢がそこかしこに表れ始めた。城山三郎の『官僚たちの夏』も、この年に単行本化されている。

【昭和五十年四月十八日小豆九月限大阪一万七二九〇円・二〇円安/東京一万七三〇〇円・九〇円安】