昭和の風林史(昭和五十年五月十四日掲載分)

屋台飛ばすぞ Pさわる仕手は

手亡相場は魔物である。そしてピービーンズは吸血鬼だ。手亡の仕手は必ず失敗する。

「山水に夏めく蕗の広葉かげ 蛇笏」

山本博康氏が全繊協会の会長を辞任して武田恒氏にバトンを渡した。そして大阪三品化繊協会の会長を辞任して小島逸平氏を五月19日の総会で会長に推す。

山本氏は喜の字の祝いを機に全協連会長を勇退した。今度の全繊協会長と三品化繊協会会長の勇退は田山KK創業20周年を機に進退を明らかにしたもので、同時に大阪砂糖取引所協会の委員長と三砂連会長も辞するつもりであった。

業界の役職すべてから身を退く考えは早くから出来ていたが、やはり、それぞれの協会に事情があって、山本氏の思うようにはならず、心ならずも砂糖関係は留任することになった。

先に山本氏を神戸生糸取引所の理事長に推す動きが業界の一部にあったが氏は固くこれをこばんだ。

いままた、大阪穀取理事長の中井幸太郎氏が、大阪穀取ビル完成を潮に辞任する決意を固め、後任の理事長問題で山本氏に相談があったようだが、山本氏は今さら理事長職に魅力を持つ心境でもなく早くも大穀後任理事長は桜井三郎氏あたりかと、噂されている。

五月は取引所、協会等の総会シーズン。

〝人事の投資日報〟が、しばらく鳴りをひそめていたから業界の事が判らないとお叱りを受けるが、風鈴の鳴らねば淋し鳴ればうれし―というところであろう。

書けば書いたで書き過ぎと叱られ、書かねば書かぬで物足りぬと叱られ、ほんに難儀なことである。

さて、手亡相場は安値から千円戻したら売ってやろうと手ぐすね引いている人が多い。

長期限月に静岡筋の仕手介入で、安値にきての大衆売りに向かう格好であるが、果たして穀物相場を苦手とする静岡筋が、この難しい手亡相場で、うまく泳げるか。

過去に手亡の仕手で成功した例がないし、ましてピービーンズに手を出して命取りにならなかったという人はお目にかからない。

ピーをさわったら屋台が飛ぶ。実際に看板を飛ばした例をつい去年も見てきている。

手亡は魔物である。

そしてピーは吸血鬼だ。

オーソドックスな小豆相場に焦点を合わせて天候相場に勝負をいどもう。

●編集部註
 ○○筋という言葉は、前世紀の遺物といえる。今と昔では、仕手の姿も形もまったく違う。

 口は悪いが、フィンテックも使い方一つで昔の仕手筋のようなものになる。一昨年だったか、株価操縦で大学生グループが逮捕された時に、時代の変遷を感じるようになった。

【昭和五十年五月十三日小豆十月限大阪一万六七八〇円・二〇円安/東京一万六八〇〇円・一〇円高】