昭和の風林史(昭和五四年十月九日掲載分)

みな売場待ち 人気がありません

どうせ上にはいけない小豆。なにかの拍子で買われれば売る。まるで社会党みたいに人気がない。

「木犀の香にあけたての障子かな 虚子」

選挙は水もの、フタをあけてみなければ判らない。自民党有利と前評判上々だったのに、開票結果は、なんとも苦しい。

新聞が作意的に自民党安定多数―と、囃したてたのではないかと思うのだ。

カラ出張問題にしても朝日新聞あたりのあつかいは、大蔵省まで槍玉にあげて、これは、選挙を多分に意識した感じである。

国民は、そんなに自民党が安定多数なら―というバランス感覚で、共産党に票を投ずる。共産党は嫌いだという人は民社、公明あたりに投票する。

社会党は、昔はもっと背骨がシャンと伸びていたのに、誰でも思う事は同じで頼りにならない。掴みどころがない。一体お前は、どっちを向いて御座るのか。

自民党候補者は、今度の選挙で随分お金をばらまいたようだが、ばらまいた割りに効果が薄いことは、これはうれしい傾向である。いくらばらまいても票にならないことが判ってくれば、政治が少しは綺麗になろう。

さて、相場のほうは安いようで安くないが安い。

まるで社会党みたいな相場である。オモロウないのである。相場に個性がないから人気につながらない。

その点、あんな精糖みたいな―という精糖相場が徐徐に人気を集めだした。

円安、海外市況高という時の運が、この砂糖相場にほほえみかけて、持ちも下げもならなかった砂糖取引所の職員さんも愁眉を開かんとしている。

先に、閑で閑で閑古鳥の巣みたいなゴム取引所が、やはり愚鈍にして仁者は待つのみ―と達観していたところ、海外市況高や大口投機筋の売買よろしきを得て、出来高増大。ゴム取に非ずして取引所に非ずとまではまだいかないが、ともあれゴム取引所も愁眉を開いた。

まあ、このように、栄枯盛衰は世のならい。天井したものは底を打ちに行き、大底打ったものは天井を取りにいく。

小豆相場も、いまのところは、売られるための段階。高ければヘッジ売りである。

安ければ、値頃の抵抗。ドカドカ安の暴落は、今の水準では、あり得ないが、買って手数料抜けが、これまたしんどい。

結局、なにかの拍子で高いところを売るしかない。どうせ上にはいけない相場である。

●編集部註
 この記事を担当していて四十余年前の出来事と現在の事象がリンクしていると感じる場面にあう。

 平成の御代では、国難に立ち向かうために選挙を行うのだとか、では、その国難は何故生まれたのかを考える必要がある。四十余年前の如きサプライズにならぬ事を祈る。