昭和の風林史(昭和五四年十月二三日掲載分)

強弱ない市場 輸大も手が出ない

商取界に流入している投機資金は限られていて穀物から精糖市場にそれらが移動してしまった。

「しがらみに少し浪たつ野菊かな 悌二郎」

今年の台湾小豆の作付面積は前年比一割ないし一割五分の減反予想である。

去年が一万七千㌶だから、一万五千㌶前後ということになる。

減反分は日本向け輸出の枝豆(冷凍)の契約栽培が増加している。

日本の小豆相場が低迷しているため、農協筋が、小豆の作付けを増やさないように指導した効果が上がったようだ。

成育は目下順調である。今年は閏(うるう)年の関係で農作業は全般に遅れてもよい年とされているが幾つか接近した台風も全部それて、これは神の恵みだと感謝されている。

台湾小豆の在庫は千㌧ないし二千㌧が投機筋の手にあると見られる。

昨年の生産高三万一千~二千㌧として日本向けに一万四千㌧。韓国に四千㌧。アメリカ、東南アジア向けスポット千㌧~二千㌧。台湾内消費と種子用で六千㌧~八千㌧。加糖アン向け三千㌧~四千㌧―というのが大?みの出荷動向である。

台湾の国際空港は今年二月から台北と新竹の中間にある桃園に移った。桃園空港は成田空港の一・三倍、建設費は成田の六分の一という事で、台北から高速道路でほぼ一時間(台北から高雄まで四時間)。従来の松山飛行場はローカル空港として使用している。

台北から北の玄関・基隆市まで日本統治時代は汽車で小一時間を要したが高速道路が開通して20分で行けるようになった。

現在の台湾は景気がよい。ちょうど日本の15年前のような状態ということだ。タクシーも三年前までは中古のボロボロの車が走っていたが、今では東京、大阪と大差はない。

ところで相場のほうは精糖に投機筋の関心が集中して穀取さんは閑古鳥が鳴いている。小豆の地合は確りしているみたいだが、ホクレンの管理相場―という印象を強くしただけに、たとえ地合が強くても投機心理は無反応である。

あとは下期雑豆輸入の発券→通関の時期が、いつ頃になるか(その前にヒヤリング→発表という段階がある)によって、相場の値頃観も違ってくるが、一般投機筋にとって、そのような予測分析は難解でもあり、自然相場に対しても無関心さを強める。

一方、輸入大豆も戻り一杯をした足取りに入った。誰もが売ってみたい値にはとどかない。

●編集部註
 当時の日本近隣のアジア諸国は、今とは違うベクトルで不穏であった。
 韓国では朴正熙が10月26日に暗殺されたし、台湾は〝外省人〟と〝内省人〟との亀裂が生々しかったし、中国は公式に文革の終結が宣言されてまだ3年しか経っていなかった。