昭和の風林史(昭和五四年十月二九日掲載分)

再び戻り売り 輸大も売りっぱなし

われわれは事件の発生を常に心待ちしている。そして事件と相場の関連を考える。それが投機家だ。

「何の木のもとともあらず栗拾ふ 虚子」

現代は、あす、なにがおこるか判らない時代で、朝、起きてみたら韓国の大統領が殺されていた。

韓国という国は、われわれにとっては近くて遠い国である。年配の人には、かつての朝鮮動乱が、瞬間脳裏を走った事であろう。

カンボジアとタイの国境の難民問題に関する新聞のべタ記事を注意深く集めて分析している人も多い。世界のどこかで、なにかが発生すれば、国際商品の相場に連動する。

韓国の大統領殺害事件が今後、日本にどのような影響をもたらすか、関心が集まる。

さて、ストップ高した輸入大豆相場が、週末は安かった。S高で相場が変わったと思い飛びついた人にとっては、なんだ―という印象を強めただろう。

輸大の高いところは売るしかない―と、どれほど強調しても、大衆は(セールスも)高いと買いたい。

高い場面は売って、あと売り玉を忘れておけばサヤすべりで金利以上の利回りになる。

一年12カ月のうち10カ月は売っておけばよい商品である。

この輸大が、来月新ポ、香港商品取引所で、(東京穀取方式)市場が立つ。香港独自の動きではなく、あくまで東穀の相場次第という動きになろう。

精糖相場はNY安を映した。また当限が暴落納会。長期的相場の見通しは商社筋も、おしなべて強気だ。ただ目先的には出来高も、値上り幅も異常だっただけに、押し目が入ってもよい。

週末の時点で、相場基調も線型も、なんら変化なしだった。

小豆相場はS安二発の反動戻し。

二万五千円台は売りという相場から、二万四千円台は売りという、そのような山の低い相場である。

いろいろと電話がかかってくる。相場の話ではない。業界昨今事情だ。許可更新役所の事。香港大豆市場関連。新卒者採用など。そしてあの店、この店。
あげくに、なにか面白い話はないか?と。

いつもこう答える。『天気がよいのが疵(きず)に玉』。お天気がよい事に感謝するのみ。今すぐ業界に光明は見出されない。また期待すべくもない。

精糖、粗糖が動いている。小豆、輸大も動けば出来る。生糸、乾繭、ゴム、毛糸。細細ながらも綿糸も出来る。贅沢言える時じゃない。

●編集部註

1984年に『キリング・フィールド』という映画が公開される。クメールルージュの行動を劇映画化した英国映画である。

歴史の裏側は、時間の経過と共に、芸術作品に昇華されて表出する。