昭和の風林史(昭和五四年十月三一日掲載分)

依然強弱なし 売り場を待つだけ

小豆のお山を低く見るしかない。戻るのを待って売る。輸大相場も円安などで高いところを売る。

「コスモスや一つ餌に寄る鶏と鳩 雪女」

11月の声を聞くと、誰しも、うかうかしておれないぞ―と、年末の段取りを考える。 

事業経営者は資金繰りの事やボーナス資金に頭がいたくなる。

営業成績の上がらない部門の責任者は、成績向上月間のキャンペーンを続けざまに撃ち込む。

日の暮れるのは早くなったが、なんともまだ暖かい。そのせいか、気合いが入らないようだ。一昔前の11月といえば、寒かったように思う。

灯油が大幅高している御時世に、暖かいことは有り難いが、商売、業種によっては、この暖かさに泣かされている。

円相場が続落して、輸入大豆相場を突き上げた。シカゴ高も影響している。中国が農産物価格を大幅に引き上げ、日本に安く売らないという事も材料である。穀取市場は、いささか弱気に片寄っていたから、人気の裏といえばそれまでだが、果してどこまで堅調地合いが続くか疑問。

輸大相場は、高いところを売っておけば、サヤすべりで結構クリスマスプレゼントになろう。

それは、輸大市場の構造面からくるものである。

自社玉は、大阪市場は、売り買いが接近しているけれど東京市場は六千枚売りの三千枚買い。

東西市場の輸大相場に対する受け止めかたの違いであろうか。

小豆の自社玉は、これは東西とも売りが圧倒的に多い。

小豆相場は、外貨ワクが決まるのを待っている。

だいたいの枠組みは予測されているが、こういうものは、ピシリと決まってからでないと強弱の方針が立てにくい。

市場は、戻すのを待っている。S安二回の前までは、二万五千円乗せから売ろうという人が多かった。五千円抜け売り―という指値の注文が随分出ていた。
その注文がはまらず、ホクレンさんに先を越して売られてしまった。

そのような事から今度は、二万四千円抜けは売りという、お山を低く見ての指値が出ている。

誰かが言った。スカーッと二万円めい台まで相場が潰れてくれたほうが、11、12の年末相場が面白くなるのに―と。

どうだろうか、そのような激しい動きになるほど取組みが悪いわけでもない。戻るのを待つしかないところかもしれない。

●編集部註
 望んでいる方向に進まないのが相場である。 

 幽霊と相場は寂しいところに出るという。

 幽霊ではないが、この年に映画「エイリアン」の第一作が公開された事を思い出す。この作品の成功が、3年後に公開される「ブレードランナー」の制作につながる。

 どちらも2017年に続編が作られている。