昭和の風林史(昭和五七年一月二十六日掲載分)

なだれてくるかもしれん

なだれ現象が発生するかもしれない。日柄と俵の重味を感じる。買わせて真空斬りか。

小豆相場は決して明るい見通しとはいえない。三千円と四千円のあいだで日足30本を食って、誰の見る目もこれが、もう重いと映る。

まして逆ザヤで迎える納会に渡し物は多いし、一月中の輸入小豆は八千㌧から一万㌧に達する予想である。

環境としては、買う材料がない。

ただ、安くなると閑な市場で買い方の煽りめいた手が出て一本棒で突き上げがくる。これが嫌だ。

買い方の顔ぶれがよいということは何度もいわれてきた。顔ぶれは確かに多彩であるし、強気する錦の御旗はあるけれど、時節がまだ来ていないのと兵隊に気力が充実していない。

それは雪の高原に張りつけに展開している弾不足の兵隊のようにも見える。

これは持久戦のようにも受け取れるが、なだれ現象が、これから先、いつ発生してもおかしくない相場になっている。

従って三千円割れの二千八百円あたり買いたかったが、これを買うと、あと千丁の真空斬りで二千円割れなしとしない。

大局的には強気のつもりだが、先週末あたりからすこし違う考えになった。二月安のコースに入るのではないか?と思う。

去年の二月は高下が激しく千円棒を三本叩いている。一昨年は黒の千円棒を一本入れている。

買い方は、時々喊声をあげて今にも突撃するみたいだが、これは実と見せかけての虚のテクニックだ。

売り屋は不在というけれど、ひたひたと潮の満ちるように現物の重味を黙々と重ねている。

なだれ注意報を出そう。

●編集部註
 なだれ注意報の根拠をローソク足で見出す事が出来る。

 相場は82年1月22日に陽線。ここからポンポンと小さな陰線が出来ている事から「小石崩れ」を警戒している。

 話は変わって、戦後昭和史の年表を見るとこの日は「ロッキード事件全日空ルートで同社幹部6人に執行猶予つき有罪判決」という記述が見受けられる。

 筆者はこの時小学生で、この汚職事件を「お食事券」に絡んだ何かと勘違いし、家族に大笑いされていた事を思い出す。

 この事件が明るみにな ったのが1976年。そこから40年後の2016年7月に、奥山俊宏というジャーナリストが岩波書店から『秘密解除 ロッキード事件』という本を上梓した。秘密指定が解除された公文書を調査したものだ。

 米国の凄みはしっかり公文書を保管して後年公開し「評価は後世の歴史家に委ねる」という姿勢を取っている点。ここ最近の日本政府とは真逆の姿勢である。