昭和の風林史(昭和五七年二月十三日掲載分)

上げた分だけ消すだろう

小豆相場は天井した。買い方が相場を崩すコースに入った。当分は上げた分を消す。

農水省の役人が、また小豆相場の価格に対して発言したらしい。価格に介入するな―といっているのに困った役人だ。

相場は役人がつべこべ言わなくても下がるところに来ていた。

二段上げの天井なのか、三段上げをしない春の相場の天井なのか、それは判らないが、ともかく天井を打った小豆相場だ。

取り組みが急減していることは、エネルギーを燃焼したと判断する。

だから、高値で買い玉をひろげた分が、因果玉となって、投げを強要されるまで下げよう。

いわゆる真空斬りである。

これは相場が相場を壊しはじめた姿である。買い方が相場を崩すわけだ。

煎れを出し尽くしたという事。五千円抜けからの相場は買い方の煽りもあったが九日の夜放れ高は完全な踏み上げだった。

煎れ出尽くしの相場は一種の骸(むくろ)である。

さて、どのあたりまで下げるか。トレンドからみると四千二百円あたりが急所になる。

三千三百円を上げた。その半値押しである。

去年の十一月安値から五千三百円ほどを上げた。だからその半値押しと見るなら三千四百円地点。

四千円抜けからの二千丁高は、さながら春天井を打ちに先を急いだ格好だ。

春は需給相場であるが多分に腕力が仕勝った仕手要素の濃い展開になった。

それだけに実需不振を見て見ぬ、危険性を持った仮需であった。その反動は日柄の食い過ぎで表面化した。

そしてこの下げで押し目買い人気になってくれれば下値は更に深くなる。

●編集部註
 官製相場に逆らうな―。
 よく言われる格言だが、お上が市場に口を出すと、大概ロクな事がない。
 江戸時代の米相場で、八代将軍徳川吉宗は米価に悩まされ続けたという。市場介入を目論むも、それが後々ブーメランのようになって返ってくる。
 高橋是清は市場原理を理解していた稀有な存在として、金融恐慌の鎮静化に貢献したが、理解しない人に殺された。
 平成の御代ではお上が株式市場で株式を買いに買っている。また築地にある中央卸売市場を豊洲に移転させて跡地を不動産市場や建設市場に乗せようとしている。
 繰り返すが、お上が市場に口を出すと、大概ロクな事がない。後々ブーメランのようになって返ってくる。
 恐らく、近い将来その咎めを受ける事になろう。そして真っ先に被害を受けるのは無辜の民である。