昭和の風林史(昭和五七年三月二日掲載分)

依然春の天井圏内にあり

三角旗(ペナント)は上か下に離れる信号。春の需要一巡で相場はひと息入れよう。

小豆相場の新ポの動きは、今月相場の運命を暗示しているみたいだった。

二月10日と23日の罫線高値を結ぶと肩下がりの斜線になる。

二月17日と25日の安値を斜線で結ぶと、ここに綺麗な三角旗ができる。

アメリカの罫線では、どちらか(上か下)に離れるところだからペナントは用心しろと教える。

強気は五千円以下はあり得ないという信念で買っている。

弱気は六千円以上はないと見ている。

二月中の相場はこの千円幅の圏内で推移したが三月は、そうもいくまい。

ものごとにはバランスというものがある。

罫線は、バランスの美を保つ芸術である。

線を上に持っていって二月10日の高値を抜くと、これは七千円に行く可能性甚だ大なりと判断するのが線の美学である。

逆に17日の安値(大阪なら四千八百円)を割ってくると、二月中に取り組んだ買い玉が悲しみになり四千円そこそこまで、バランス安定のために下げると見るのが過去の経験である。

過去の経験といえば、小豆には小豆の習性がある。

去年は二月24日(そしてもう一度四月30日)に春の天井を打った。

その前の年は三月5日に春の天井。そのもう一ツ前の年(54年)は二月16日。

過去五年間、二月か三月に天井している。

今年も多分似たような波動になるだろう。

これは時間の重圧である。また、春の需要が一巡したあとの相場の呼吸でもある。人為の及ばざる世界にわけ入るのだ。ペナント(三角旗)に注目。

●編集部註
 分け入っても分け入っても青い山―と、山頭火の句のような相場展開には決してならない。保合いは必ずどこかで終わる。
 もっとも心理面は別だ。ど高値で買いを作り、損切りせず、我慢に我慢を重ねたその果てに、ど安値で売りを作って両建てにすると、分け入っても分け入っても相場心理は〝捨てきれない荷物のおもさまへうしろ〟となってしまう事はあるだろう。
 三角保合いは、大きなものをトライアングル、小さなものをペナントと呼ぶ。どっちだって良いじゃないか、という方もいらっしゃるだろう。ただ前者と後者とでは放れた時の影響が違う。この2月から3月頭にかけての保合いは、ペナントであったかも知れない。しかし、そこから春にかけて更に大きなトライアングルを形成してゆく。
 山道は身が軽い方が楽と相場が決まっている。しかし、ペナントからトライングルへの移行期でしばしば「捨てきれない」荷物を抱えてしまうのだ。