昭和の風林史(昭和五七年四月一日掲載分)

花の散る頃相場も崩れる

四月は下げる番だ。花の散る頃買い方追証がかかろう。相場は皮肉に動くものである。

小豆相場のコントラリーオピニオン(強気指数)を出すとすれば恐らく90(百人中90人が強気)になったのではなかろうか。アメリカでは指数30以下になった(弱気が70%)。商品は売ってはいけないとされ、80以上の商品は買ってはいけないとされている。相場は人気の裏を行くという原理をアメリカ人らしく数字でとらえる。
強気筋はひと呼吸入れて新ポから先限強気の陣構えである。
五千円以下聖域。売るべからずの幟を立てている。
即ち三段上げ波動に乗って六千円抜け七千円という想定だ。需給は緩まんと見て、あくまでも制空権を握っていこうという作戦。
売り方は、これは気味(あじ)尊重派や罫線筋である。
市場の噂としては11月自民党総裁公選に絡んだ政治資金が売りポジションらしいというが、これは判然としたものでない。
自由化問題が、どう転ぶか判らない時だけに憶測だけが飛ぶ。
商いのほうは小口で出来高の弾む節がない。
先般の下げ道中の四千三、四百円あたりを売った玉が五千四、五百円で追証入れるか、玉踏むか―と迫られる。
買い方が、ここを一気に攻めて、この踏みを取ったとしても五千八、九百円であろう。六千円台は、新たな売り物が待機している。
相場としては三千円と四千円圏内で実需を伸ばしたほうが先の楽しみがあるわけだが。逆ザヤ、逆ザヤで突っ張っていては実需は当用買い。大衆は敬遠する。
波動は一月上げ、二月下げ、三月上げだったから四月下げの番がくる。

●編集部註
 政治の世界と相場の世界との間には、何かしらの物語がある。
 米相場を操作しようととした徳川吉宗。
 銭相場で資金稼ぎをした長谷川平蔵。
 株式相場を有効利用した犬養毅。
 金融市場の荒波を制御し、後世に名を残した高橋是清。
 戦後の商品取引でも、あの時の選挙の資金は○○で生まれたとか、あそこの団体は◇◇が一手に資金運用を手掛けているとか、そんな噂がまことしやかに流れていた。
 このあたりのお話は、鍋島高明氏の著書で多く登場する。また、城山三郎氏の初期作品にそんなテーマが多いのは意外と知られていない。