昭和の風林史(昭和五七年五月十七日掲載分)

Wボトム叩けば狂騰絶対

この小豆は買い屋の勝ちである。青田底を叩けば相場狂騰は自然の成り行きである。

小豆の取り組みは、ぐんぐんふえる。

弱気は弱気。強気は強気。大きな勝負になった。

弱気はT社敗退の連想で六本木崩せ?の総攻撃。二万八千円から二万五千円が目標らしいが、六本木は崩れない。これは絶対と言ってよい。

市場では三晶の怪という。IQホルダーとしての売りではなく、委託玉は受けない建前でも、なにかそこにあるようだ―と噂されていた。相場を叩き崩さんがための戦術なら、見事に成功した。

買い方は納会を受けるし、来月も受ける。売り方としてはタイムリミットを考えて、今のうちに決着をつけたい。

この相場は(1)売り玉の利食いだけでS高する。(2)安値売り込み玉が三千円以上の相場に弾ける。(3)買い方はじっとしておるだけで毎日場勘が入ってくる。

線は綺麗な二点底。すなわちWボトムだ。

日柄は下げ期間を十分過ぎるほど食い込んでいるから回復しだすと、ピッチが速くならざるを得ん。凄い勢いで上伸する。

見ていると生糸絡みである。静岡筋も安値を売ったようだ。大きな戦争。熱い戦争。売り方のトークはそのうち静かになろう。

四月10日の高値は瞬間買い切ってしまうトレンドができてしまった。凄いよ、この反撃は。売り屋は将棋でいえば指し過ぎ。自分の力で自分が負ける。

勝負ごとはえてしてそういう事がある。ひょいと流れが変わると、この相場だって沸騰また狂騰。
なにしろ青田底を叩くのだから売り過ぎもあったものでない。渦中にいるとそれが判らない。

千円、千五百円幅が宙に浮いている感じ。

去年の秋底の時もそうだったが今のは青田底。今週は買い屋の勝ちである。

●編集部註
 しっかり〝今週は〟と書いているところが注目ポイント。売り方、買い方、双方とも一回の勝負に弾薬を使い過ぎている。
 大相場はつまらないくらいがちょうどいい。相場が頻繁に大きく動く時は、得てして短命に終わる事が多い。
 池波正太郎の「鬼平犯科帳」の言葉でいうと、この時の市中は急ぎ働きが横行していたと言える。
 いま思えば、池波正太郎の作品ほど長期間にわたってTV時代劇になっている物はないと考えるのは筆者だけだろうか。
 今の人は、鬼平役を中村吉右衛門と思う人が多い。しかしこの役、70年代は彼の父親である中村白鸚が演じていた。丹波哲郎がやっていた時も。
 80年代は萬屋錦之介が演じていた。この頃第3シリーズが始まっている。