昭和の風林史(昭和五七年七月九日掲載分)

すべての旗にそむいても

勝者は勝ちやすきに勝つという。小豆買い方は流れに逆らって頑張っているが徒労。

当限新規百万円の二番新規五十万円増証や建玉、受け渡し玉の氏名等の報告は第四次規制になる。

要するに期近限月の片寄った建玉をほどくための規制強化なのに、挑戦するかの如く強引に買い玉をふやされては役所も取引所も心中穏やかでない。『期近二限月の新規玉増証は、〝手付け〟みたいなもので、今後状況次第で、次々対策が出るのは当然』(東穀森川常務)。

店別建玉規制や、当限新規建玉停止、あるいは割増証拠金等も〝市場管理要綱〟の趣旨と照合しながら検討は進められ、ともかく市場の正常化に行政当局は真剣に取り組んでいる。そのような時に、7日の強引な買い煽りは、買い方にとっては墓穴を掘る格好となった。

先二本限月は作柄順調を反映して実勢相場。大衆は、この先二本に的を絞って期近は敬遠すべきだ。

取引員自己玉は東西合計してようやく売りが買いを上回った。

高場の東京を売り、安場の大阪を買うサヤ取りも多いが、相場の基調が期近二本以外は、やはり下のものだけに、いつ崩れがきてもよいシフトをとるのは当然。

折りにふれて輸入予備枠発券が話題になったが、予備枠よりも次期枠の早期発券が、いまのように現物の偏在が続いて円滑な流通が阻害されると判断された場合は決断をもって実施される機運になってきた。

作柄のほうは少し遅れたのを綺麗に取り戻して至極順調。平年作以上は大丈夫という人気になった。

ものの売れ行きのほうは不需要期とはいえ、さっぱりのようだ。

買い方は〝すべての旗にそむいても〟という映画の題名もどきスタンスである。

それは〝栄光なき戦い〟である。産地に〝太陽がいっぱい〟の音楽が流れていた。

●編集部註
 眼に見えているものが全てではない。文章には〝行間〟というものがあり、比喩や暗喩という表現もある。風林火山は、暗喩の名手であった。
 直言するよりも、古典や映画からの引用等でより深く理解する手法は、不勉強者には伝わらない仕組みになっている。それで良いのかも知れぬ。
 今や好人材を育てる人物の代名詞となった古代中国の伯楽という人は、名馬を見分ける名人で、教えを請うべく中国全土から人が集まった。その者達に、彼は惜しみなく名馬の見極め方を教えたのだという。しかし、伯楽自身が有望と認めた人だけ、努めて駄馬の見分け方を教えたのだとか。