昭和の風林史(昭和五七年七月二三日掲載分)

もう、売る相場ではない?

戻せば弱気(売り)も出てこようが、もうこの小豆売るところでない。

本間宗久伝に「秘伝・気を転ず」という一項目がある。

ともすれば惰性的な弱気になりやすいが、気持の整理をつけて感情的弱気をさっぱり捨てるべきだと思った。

戻ったら売りたい人が割りに多い。また、目立つ売り玉が出ている。この筋は『二万二千円目標』でケイ線一本という。

売りっぷりを見ていると、なんとも、あぶなそうで、掴まるのでないかと思う。

いわゆる新たなる売り仕手だ。

相場は反発した。これは仕手崩れ後に見せる自律反騰でもあるが、下げ日柄が限界を越えていることから、環境が落ち着いてくると、冷静な見方で買い方針が有利になるところ。

また、あれだけの取り組みが一瞬にほどけた。これは原点に戻って考えると玉整理完了といえる。

値頃水準も、だいたいこのあたり抵抗帯だ。

それに次期枠の絞り込みという政策面からのテコ入れも考えておきたい。

天災期は、これからが山場でもある。今年は二週間周期のリズムだから、来週から下り坂のお天気だ。

このように考えてくると、いずれ証拠金も下げることだろうし、規制も緩和方向にもっていかないと取引所も業者も困る。

もとより現物のヘッジや仕手手持ち現物の金融流れや台湾小豆の値下がりなどの軟材料もあるけれど、相場さえ活力を取り戻せば投機資金は小豆に戻ってくるだろう。

このように考えてくると腹立ち商いで相場に売り向かうのは愚の骨頂だと思う。相場の世界は済んだ事は薬にこそすれ、いつまでもくよくよしない事。

●編集部註
 相場は、勝つ事よりも勝った後の方が恐ろしく、そして難しい。相場師あるあると言えるだろう。
 往々にして、勝った後にいらん事をして、被る必要もなかった損を被る事がよくある。故に「休むも相場」なのである。
 実際、小豆相場はここから反転上昇に転じる。
 しかし、大局的には今回の相場で売り屋には恩讐が残っている。売り屋の恩讐の彼方に見える光景は下降トレンド。気を長く、臥薪嘗胆で相場に接する売り屋の強さがこれからの相場で目撃される事になる。
 「相場は運・鈍・根」という相場格言がある。運が回ってきた相場師が鈍と根を駆使して臨む相場には凄みがある。