昭和の風林史(昭和五七年八月十二日掲載分)

はいそれまでと梯子とり

人気を強くさせておいて、はいそれまでと梯子をはずされる相場になるだろう。

小豆は戻り新値に一発高。待ってましたと買い玉利食いかと思ったら、そうじゃなく高いと買いたいで高値を買っていた。産地の天候が崩れる。ホクレンが買うという材料のようだが、むしろ絶好の売り場づくりでなかろうか。

強気がふえるということは、盆から先の反落相場の要因をつくるわけで、農水省発表の作付け面積はなんとなく増加しているふうである。

作柄のほうは九分作、百万俵前後の予想。

まだまだこれからの天候如何で減収にも増収にもなるだけに、なんともいえないが、先限三万三千円目標などという声に煽られて飛びつけば八月天井摑みということになろう。

相場の呼吸からいうと12日、13日は、もし高ければ売るところとみる。

この相場は仮りに静岡筋が買おうとも、引き継ぎ線で三千丁戻しは、精一杯と思う。

現物が逼迫するわけでない。

むしろ不景気による売れ行き不振のほうのウエイトが大きい。

V字型で反発しておいてダンゴをつくり、そのカタマリを上抜いて二段上げ。これで人気を強くして買い付かせれば、はいそれまで。ご苦労さんでした。

いまの小豆は玄人中の玄人ばかりの相場で、それも小豆専科のプロ中のプロであるから、利食い足も速い。

また、相場をそんなに大きくみているわけでもない。自由化問題もあるし、安徽小豆圧迫も実需不振の足を引っ張る。

そのようなことを色々考えてくると、11・12限の千三百円~五百円。1限の二千円台乗せあれば、売っていきたい。

おどま盆ぎり盆ぎり盆から先は安いぞ―という考えは少しも変わらない。

●編集部註
 既に後の相場展開を知っている人間としては、例えるなら一気呵成に攻め込む武田騎馬隊に対して、織田鉄砲隊が一斉射撃で殲滅を仕掛けるほんの数秒前の状態によく似ている気がする。実際に目にした事はないのだが。
 1982年8月12日、東京小豆先限日足のローソク足は、前々日のギャップアップと比べると20円見劣りするものの、それでもマドはマド。プロ中のプロ、それも売り方のプロはこの足に所謂〝星〟を見出したのではないか。
 プロがプロたる所以は、読んだら動く事。ダメなら撤退するだけという腹積もりがある。
 アマがアマたる所以は、読んでも慄いて動かない、いや動けない事。いろいろと理屈をつけて動けぬうちに好機が去って行く。