昭和の風林史(昭和五七年九月七日掲載分)

小豆はこのまま崩れない

小豆は、このまま崩れるには少し早や過ぎる。安値叩くと強烈斬り返しがこよう。

小豆は自由化問題という山より大きな猪(しし)が出るかもしれないという警戒感がある。

これだけは、誰にも判らないから困る。

生産者は、農業政策に協調して小豆の増反に踏み切ったが、増反したは、自由化になったは―では、踏んだり蹴ったり、政府を信頼できなくなる。

週明け小豆相場は在庫が思ったほど減らなかったことと、台風15号が産地に関係なかったこと、作柄は申し分ない―などで売られた。

戻りが鈍かったり、三万一千円台の買い玉が整理されていないことなど、ズボーッときた。

しかし、これを売ると?まるように思う。

いまの時期としては九千円割れに落ち込むのは少し早い。

ここのところは逆張りでなかろうか。

産地はこれから早霜の不安におびえる。豊作人気で売り込むと、あと早霜一発で強烈斬り返しになる。

筆者は、目先的に反発するところとみていたが、一段安に叩いて、その反動で反発するのかもしれない。

大局的には売り相場であっても、目先的には安値売り(追撃売り)危険とみる。

輸入大豆のほうは日柄待ちに入った。

穀取輸大は先限と期近は相場の性格が違うものになっているが、東京先限引き継ぎで二百三十円を反発して、半値を押していない。

期近限月になると大阪当限九百円強をV型に上げて、今の水準は六月中と同じところだ。

ドラマチックに下げたから、ドラマチックに戻しただけで、これからが相場という段階である。

●編集部註
 ここで採り上げられている自由化の問題しかり、その36年後にやって来た築地の豊洲への移転問題しかり、政府は日本の市場を現物先物を問わず殺そうとしているのではないかと思う時がある。日々の商いを見ていると一部の商品を除いて穀物市場の大半が死んでいる。
 ご近所という事もあって築地で働く人との交流があるのだが、水産系で豊洲の良い話をした者は誰一人いない。「行きたがってるのは馬鹿と禿」だとか。因みに後者は〝お偉いさん〟の事を指す。
 短いながらもここまでの穀物相場を見て来た者から見て、恐らく豊洲はゆっくり死んでいくのだろう。真っ先に死んでいくのは仲卸の筈である。
 山田清機の「東京湾岸畸人伝」というノンフィクションを読むと〝馬鹿と禿〟が殺したい人達が浮かび上がってくる。