昭和の風林史(昭和五七年十月二六日掲載分)

征馬すすまず人は語らず

注目の生糸納会。そして明日は輸大納会。見ている側も手に汗だ。小豆気がない。

秋蚕の糸吐き急げ値が荒い―というところ。横神生糸在庫は増勢を続け、納会蓋をあけたらどうなるか。

先月に続き、受けも受けたり、渡しも渡したりと予測されていたが、二番限以降を見ていると寒い。線は10月20日中段の戻り天井を打って、11限の(神戸)七百三十円割れから一気になだれ現象、積水を千仭に落とすが型になる。

輸大は強気を支援する環境、材料が常識化して、これまた当限納会がドラマである。

輸大(大阪)11月限の線型は三番天井型。

15日に上寄って五寸釘のような陰線を叩き込んだこの線が支配している。

日柄にしても実数52本。買い主力は智略の用兵の極致を余すところなく九月、十月と見せてくれた。

そしてこれを11月にも延長を―と強気している人たちに期待を持たすが、兵も馬も疲れ果てる姿。

乃木希典は山川草木うたた荒涼、十里風なまぐさし、新戦場、征馬すすまず人語らず、金州城外斜陽に立つ―と。

まさに生糸当限、輸大当限そのものの観。

それはそれとして小豆のほうは、ここまできたけれどという表情だ。

いま一歩前に進めば売りやすくもなれば、買いやすくもなろうが。

見渡せば強気が意外に多い。

カンカンの強気は三万一千五百円(三月限)という。

普通の見方で先限三万五百円あたりである。

小豆の上値は大きく見ないほうがよいと思うし、11月新ポは売りになると見る。

大勢的には二万三、四千円といいたいが二万五千円~六千円が年内にあるだろう。

いまのところは八千円の安値を売った玉が、いじめられているが、ナンピン売り乗せがご正解。

●編集部註
 相場とは全く関係がないのだが、この記事が掲載された82年10月26日に灰田勝彦が亡くなっている。享年71歳。
 「燦めく星座」に代表される戦時中の人気歌手にして、当時のアイドル高峰秀子と共演するような映画スターでもあった。
 戦後に入っても歌手と映画スターとしての人気は衰えず、上原健や笠置シズ子と共に出演した映画の主題歌「野球小僧」は大ヒット。これは後年、
小林克也や伊武雅刀によってカバーされ、ミズノのCMにもなった。そういえば民放ラジオのCMソング第一号の歌い手も灰田勝彦である。
 その昔、特に戦後間もない時代は、映画の主題歌が時代を象徴するヒット曲になる。あの「リンゴの唄」も映画の挿入歌であった。