昭和の風林史(昭和五七年十一月九日掲載分)

体力のない小豆は落ちる

世間一般が病気しているのである。小豆だけが衰弱しているのではない。輸大然り。

小豆相場は薄商いだ。

相場のほうも強気が多い割りに芯がない。

相場背景としては今期輸入枠の絞り込みとか、発券時期の先送りなど臆測が飛び、それをなによりの強気材料とする人も多いが、相場そのものは、非常に〝だるい〟。

これはなぜだろうか。消費地在庫は数字の上では軽くなろうが、中味は北海産がふえて、輸入小豆を使い馴れした実需筋にとっては、腹に〝モタれる〟。

投機家が元気な時なら商い高も弾むところであるが、新しい血が入らないし、どちらかといえば玄人といえど、よれよれになっている。

過ぎし六本木相場で傷つき、生糸戦線に残存兵力を移してこれが討たれ、輸大市場に斬り込み隊を投入して未だ帰還せず―の図。

先物市場がそうならザラバ現物流通経路も不況による実需不振と信用供与不安があってパイプが細くなっている。

要するにわれわれは物を見る目、視点と視座を変えなければ、今の現実を見間違えるのだ。

筆者が、この小豆、来月あたりになると二万五千円、六千円があるだろうというのもそれである。

産地農家手取り一点張りによる相場価値判断は古きよき時代の強弱だ。

まさか、よもやが突出するのが今の世の中。

相場は相場に聞けという。小豆先限にしろ三月限にしろ線は泣いている。

役所の価格政策やホクレンの一元集荷などで相場が左右されるものならば、誰が小豆なんか思惑するものか。人気は更に離れよう。

輸入大豆は、当限野中の一本杉。結局はこれも順ザヤまで崩れる運命だ。

農水省は生糸市場の建玉調査を始めたが輸大市場の建玉も調べるそうだ。嫌気される材料である。
●編集部註
 この時、街ではあちらこちらで沢田研二の「6番目のユ・ウ・ウ・ツ」が流れている。風林火山の業界へのユ・ウ・ウ・ツは留まる事を知らない。実際、杞憂は現実化した。
 平成最後の年に何かと世間を騒がせた沢田研二だが、彼はこの曲のヒットでソロシンガーとしてオリコンのシングル総売り上げが山口百恵を抜いて歴代一位となる。そこから9年間、一位の座を明け渡す事はなかった。
 この時山口百恵は芸能界にいない。80年に三浦友和と結婚、引退した。
 シンガーソングライタ ーになった長男は夕方にラジオ番組をやっている。彼の声を聴くたび、嗚呼、時代はどんどん過ぎていくのだなと思う。