昭和の風林史(昭和五七年十二月六日掲載分)

01.11(日刊版12月25日付)

小豆いよいよ買い場接近

小豆の七千二、三百円以下あれば絶好の買い場になる。安値叩くと摑まる相場だ。

T社の生糸売り受託店の処分(八日横神両取理事会)が六社・八社と具体的社名が流れ喧々ごうごう。

処分の線引きをどのようにしたのか。この店が入って、なぜあの店はまぬがれたのか―。

また、T社生糸売りの玉を抜け解け合いでほどいたのは役所→生糸取引所の切なる懇願によるもので、あの場合はああするしかなかったという解釈。だから処分の対象にしないという条件もついたようだ。

もしこの処分が決定すればさまざまな問題が発生しよう。

その一ツに輸入大豆のT社玉受託はどうなるのか。

この場合、四十数社が営業停止処分となれば、前代未聞。協会、取引所の役員、理事に残る人がいなくなる。

T社問題は相場強弱にも絡んでくる。

そしてこれがまた取引員経営上の種々問題に波及する。そんなこんなで今年は年の瀬ぎりぎりまで、なにが起こるか判らない。

小豆は、七千円割れがあればなお結構の段取りで安場を買いはじめてもよいと思う。在庫増、実収高発表、輸入枠問題等の悪材料に対しての免疫ができてくるところだ。

ここで一気に叩かれると、九千七、八百円あたりを摑んだ因果玉が投げてくる。この投げが出たら灰汁抜けできる。

辛抱できる人は頑張ってナンピンかけるべきだ。

トレンドからいうと、七千二百円以下成り行き買いになるし、日柄も12月10日~15日あたり急所。

輸入大豆はT社がらみと取引所の出方。それによって玉次第というところ。

今週は処分問題にからんで騒然となる週だ。

●編集部註
 ほんの十数年前まで、各社の手口は公開されていた。しかも今と違って、ここで登場する大豆や小豆相場はザラ場ではなく板寄せである。前場の何節で、何処の会社が何枚の注文を出したかが判るようになっており、翌日にはその一覧が各社に届く。そのため、T社がどんな取引をしていたかは、白日の下に晒される。
 前日の記事で、T社の取引をインパール作戦になぞらえていたが、戦中派にしてミリタリー関連にも造詣が深い風林火山がこの作戦を引き合いに出したという点に意味がある。
 恐らく、過去の経験則から壮大な負け戦の匂いを感じ取ったのではないか。もしこのT社が、数年後に社会問題化するあの会社であったのなら、負け戦どころか、殺人事件が起きている。