昭和の風林史(昭和五八年三月二十二日掲載分)

小豆傍観すればS安あり

小豆は傍観していたらS安もあるだろう。ゴムの売り上がりがご正解でなかろうか。

シカゴ大豆期近の相場つきは五㌦70以下に用なしを証明した。そして、六㌦台における展開の開幕だ。

円安は三角保合を切って二四〇円台、五〇円台に垂れ込むのか。

それとも反動をつけて円高に向かうのか。

大豆強気は円安を期待し、ゴム弱気は円高を願い、円は上げてよし下げてよし複雑に絡む。

輸大相場に嫌気してダイナミックな相場を展開しているゴム市場に投機家は移動している。

ゴム期近限月は敬遠して先のほうの50円台、60円台、百尺竿頭売り上がれば、崩れだしたら修羅八荒の生き地獄。それが、いかにも接近している感じである。

しかし、ゴムの大局観は、向こう一年上昇という基本的な考えでよいのだろう。だから、ここでの売りは20円ほどの上昇初期の押しを狙う。まそのようなところであろう。

小豆が、実にだらしない相場つきで、実勢悪というものには勝てない。

とにかく豊作尻の小豆であることを忘れがちだ。

春の天井を打った以上は、五月か、六月の青田底待ち。

それから先が天候相場。

ひとまず八千円の抵抗みたいなものがあろうが、期近から足を引っ張るのだから泣く子とサヤすべりには勝てん。

更に、人気が白々と離れていては、買い方高値掴みの玉が投げるたびに、自分で首を締める。

この相場、七月限あたり八千円を割ってくると七千百円までS安もあろうかという崩れさえ考えられる。勿論、五、六限も悪い。

だからと新規売りにいくと下がらなくなる。

●編集部註
 この文章が掲載されたのは春分の日の祝日明けの火曜日である。
 その前の週の19日、政治評論家の戸川猪佐武が急死した。享年59歳。
 読売新聞の政治記者としてキャリアをスタートし、TVのニュースキャスターという顔もあったが、現在では「小説吉田学校」の著者というと理解が早い。この作品が映画化され、18日に試写会が行われ、宿泊先のホテルで倒れた。
 この作品、小説も映画もどちらも面白い。森繁久彌が演じる吉田茂は本人そっくりである。
 米国のアカデミー賞では、存命で当時の副大統領だった政治家を描いた作品がノミネートされたが、日本ではこの手の作品を暫くみていない。
 昔は桜井長一郎等がテレビの演芸番組で政治家達のモノマネとかをやっていたが、今は松村邦洋くらいしかやらない。
 どうしてなのだろう。