昭和の風林史(昭和五八年三月二十三日掲載分)

春の天井打った小豆です

輸大に厭いた人たちがゴムの高値をこれから売っていこうとすることは賛成である。

シカゴ高、円安にもかかわらず輸入大豆相場は沸かない。

中豆圧迫という先入観が投機家の頭の中に叩き込まれたため人気が冷めている。

四千円台は現物を渡されるという今の市場構造では、投機筋に夢がない。

いずれ先に行けば、シカゴ相場、フレート相場にゆさぶりをかけられ、中豆圧迫感も緩和する段階に入るだろうが、それまではヘッジャー支配下、売り屋の天下のようだ。

とはいっても輸大の下値は、かたまっている。軟材料山積で、この堅さである。ということは中豆圧迫に免疫ができつつあるわけで、軟材料が響かなくなった相場は、必らず硬材料に鋭敏に反応しだす。

小豆相場は下げトレンドの中にある。

このトレンドは悪くすると八千円割れ素通りで、七千百円あたりまで、わけもわからず安いという、売っている人でさえ、あきれてしまう。なにかそういう怖さを持っている。

春の天井三月八日。これから四月、五月にかけて、天候相場前の底をとりにいくコースだと見る。

本間宗久伝〔最上此方共上作の年、冬中より正月頃まで釣合高値の米は三月中の日より四月中の日の間にて売り崩しあるべし〕

一月、二月、三月と強かった小豆。一月の上げは、下げの反動高。二月は買い方努力相場。三月八日迄は強気の最後の奮闘。

ホクレンや農水省後援・協賛という格好の、願ってもない環境に買い方は置かれていたが、実勢無視の相場は、日柄がくると無気力化して崩れる。

特に大衆不在の市場では、踊り手がいない。

ゴムが段々面白くなってきた。気配急変すれば修羅八荒生き地獄だ。まさに崩れんがための高値追いというところ。

●編集部註
 大豆相場のチャートが臨死体験から本当の死に向かおうとしている平成最後の3月、ゴムの商いは往年の勢いから見れば見る影はないものの、それでもなお相場がちゃんと成立している。
 未来永劫上げ続ける相場など、この世には存在しない。どの相場にも上がり目と下がり目がある。下がり目のくすぶり時に、どれだけ運を貯め込んでいるかで上がり目に獲得する恩恵の量は変わる。
 それを日本の商品市場に置き換えると、くすぶりにくすぶっていた時に真っ当な姿勢で相場に臨み、運をため込んでいた勢力は、個人であれ法人であれ、それ相応の対価を得られる気がする。