昭和の風林史(昭和五八年六月十七日掲載分)

怖い小豆踏み上げ一万丁

55年は連続S高一万丁上げだった。その再現を小豆が暗示している。早踏み早勝ち。

オホーツク海高気圧が停滞して冷たい空気を北海道に吹き込む。

そして低気圧の影響で雨がまた続きそうだ。

北海道小豆は最悪事態である。

いまのところ四日ないし六日の(作柄)遅れというけれど、発芽後の低温障害は、仮りにその後の天候回復をみても後遺症が残るし、三カ月予報を見ても決して、その後がよくなると思われない。

そのようなことから相場は冷害・凶作を見込んで助走の段階に入った。

産地農家は、あと一週間今のような天気が続いたら凶作間違いないという。

今の時点は七・三で凶作という人も出てきた。

産地作柄も怖いが、もっと怖いのが今の取り組みである。

一体、売っている玉に現物があるのか? 現物はないのが見え見えの売り玉ばかりだ。

となると場で煎れるしかない。

玄人筋の大手売り玉は逃げたい焦燥感が、ありありと出ている。逃げるために叩いてみるが、叩いた玉が逆効果で相場はいうことをきかない。

ここのところは、早逃げ(早い踏みあげ)早勝ちである。戦艦クラスの売り玉が方向転換しだしたら大浪をくらう。

買うならどの限月がいいかというが、黒板勝負なら先限であり、現物屋商売なら10限買いだし、七、八、九のカラ売り踏みあげ狙いでもよい。

従って、どの限月でも走る時は、同じスピードである。要するに出回り遅れになる11限が走り、ヒネがサヤを詰めに追いかける。

当面の目標は倍返し、先限三万三千円は凶作相場の第一幕。

いつかも書いたが昭和55年の時のあの一万丁踏みあげの再現と思えばよい。

●編集部註
 〝見切り千両〟という。
 当然、見切りが早まって大相場を逃す事も経験則上多々ある。だが、これまでの戦歴を振り返ってみると千両とまでは言わないものの、九百両くらいの価値はあるだろう。
 相場の世界では「シマッタ」「御免」と即座に言えて動ける人間が強い。それは、次の一手で挽回する確率が高いからだ。
 他方「シマッタ」「御免」というと死んでしまう病に罹っている人も。相場世界でそれは確実に死を意味するのだが、当節この手の御仁があちこちと相場とは関係ない所で増えている気がする。〝値洗い〟という明確な判断材料がないからだろう。
 憎まれっ子世に憚るという反面、天網恢恢疎にして漏らさずとも。何処かで銭金に代え難い人としての〝投げ・踏み〟を経験する羽目に陥る筈だ。