昭和の風林史(昭和五八年七月二五日掲載分)

噴値は利食い押し目買う

噴値は利食い。押したらまた買う。小豆は弱気が多いから寿命が長くなるばかり。

小豆は、お手々が合わないと、とめどなくチャブつく。

三晶売りで冷水をかけられ相場は押し目をつくり、また気迷いを深めた。

三晶売りによる押し目は“燃え草”になろう。

冷害年の高値にきての同筋の売りは、たいがい大幅に引かされる実績があるし、過去では近藤紡の大量売りがそれ(燃え草)だった。

きょう25日は大阪では天満の天神祭。昔は天神天井・天神底という言葉があった。

七月小豆相場は、ひとまずこのあたりでお昼にしようかというところか。

要は八月に入ってからの決戦である。

冷害凶作を完全に織り込むところまで行っていない。パーッと燃えきれば早いのだが、くすぶっている。そのくすぶりは、予備枠や次期早期大型枠など外貨割り当て作業に絡む行政の顔色うかがいからくる。

それだけに市場はナーバスだ。

しかし、相場の流れとしては三万六千円→八千円という売り方総懺悔の場面がなければ終止符を打たない。

相場が相場をこわす、いわゆる相場の自壊作用は今のように圧倒的売り人気の段階では、絶対にあり得ない。

下げるのは、あくまでも押しである。

売り方が玄人筋や大手筋だけに、この相場は非常にねばりがある。強力な買い仕手介在ならば、とうの昔に舞い上がって、今頃は相場が相場をこわすところにきているだろう。

月末にかけての一呼吸は再び八月新甫からの劇的相場展開のスプリング役になる。相場の基調未だなんら変わるところなし。

●編集部註
 ここで登場する「三晶」は三晶実業の事である。
 日本橋の一等地、日本橋高島屋の斜向かいに今も立派な自社ビルを構える豆のプロ集団だ。
 彼らが売ってくるというのは投機的な側面もあるのだが現物を扱う故に、少々一般投資家とは目的が違う。渡し物を保有しているというのがでかい。本来、先物取引価格の存在意義は価格の平準化であり、その手段としての投機なので、現物を持っている人間がこのマーケットでは一番強い。勝っても負けても、現物を受けたり渡したりすれば次のラウンドに参加出来る。
 今よりはるかに金の価格が安かった時代、金の先物を現受けするつもりで買う事を勧めていた。所有玉を全て受けろというのではない十枚買ったら一枚受ければ良い。
 あの頃、金は1㌘=2,000円以下だった。この時のお客さんを会社が大事にしていれば…。