昭和の風林史(昭和五八年七月二九日掲載分)

暴走前夜の無気味な小豆

相場のリズムもパターンも全然変わらない。小豆はこうして大相場の展開。

28日付毎日新聞“ワールド25時”で中国各地の異常気象・洪水被害が紹介されていた。

それによると六月下旬から七月中旬にかけてかなり広範囲の地域で豪雨による洪水被害が出ているようだ。

古来、中国では水を治めることは国を政めるといわれる。農作物の被害は10億人民死活の問題である。

小豆は納会をみて様相が急変している。

オヤオヤこれはいけないとばかり現物に買い気が殺到していた。

月末にかけて一呼吸いれるかと思ったが、もう押し目は十分すぎる程入れましたと相場の表情。

弱気でも三万六千円近辺まで舞い上がるのは仕方がないと覚悟しているようだ。

それさえ凌げば、予備枠をひっぱり出せるという計算がある。

しかし五千円抜けからの火柱高は資金的に耐えられても、精神的に参ってしまうだろう。

昭和最悪の凶作というのに三万三千円を叩くという考え方が判らなかったが、これからその答が出てくるだろう。

いまのところ全道収穫40万俵。そのうち二等検12万俵。作柄三分作とみればよいだろう。八月に入って花のつかない畑をみて愕然とした時はもう遅い。

問題は、どのあたりから作柄と相場が分離しだすかである。

三万六千円→八千円の圏内で市場騒然としてからでなかろうか。

踏み終わるまでどうにもならないのが相場である。

それにしても買い仕手のいない珍しい相場だから寿命が長い。

売り方は相場が見えないのではない。見ようとしないだけだ。多分に心の曇りである。

高値は利食いして押したらまた買う相場。

●編集部註
 先日、痛烈に自身のラジオ番組でNHKを批判していた久米宏が、NHKの朝の番組に出演した事が軽く話題になった。何故NHKが駄目なのかを、NHKの生番組で理路整然と語る姿は、ぶっ潰すと息巻くものの、内実は金目当て以外の何物でもない下品な参議院議員の姿とは決定的に違う。
 思えば久米宏のNHK弄りはこの頃横山やすしとやっていた「久米宏のTVスクランブル」が嚆矢であった。後々ここでの実験が「ニュースステーション」に繋がる。
 この番組で、人民服を来て年季の入った自転車で通勤する北京の市井の人々がよく採り上げられていた印象が筆者にはあるが、この頃の中国像を今も引き摺る御仁が意外に少なくないという事に慄然とする時がある。