昭和の風林史(昭和五八年九月六日掲載分)

輸大の買い気更につのる

輸大はシカゴを待ちきれず買い気集中。小豆は薄商い。難しいところという。

米国は九月の第一月曜はレーバー・デー(労働感謝)。

シカゴに相場が建たないと穀取輸大もコンパスの足をどこに置いてよいのか手さぐり。

前週末は三市場二十一万八千枚の取り組み。半場で三万四千八百枚の出来高。大取り組みの大出来高は人間喜怒哀楽でいえば喜の部分でなかろうか。

相場界では、むやみに喜ぶな―という。天にも頂(いただき)ありと書いて有頂天。なに事も有頂天になると反動がくる。

人間の感情が喜怒哀楽なら天地の原理は陰と陽、天然自然は春夏秋冬。

夏が過ぎれば収穫の秋。

相場のリズムは春天井の青田底。夏天井なら秋底。

穀取輸大はシカゴを待ちきれず新値に買った。

大衆筋は買い玉利食いしたあと、再び買い気をつのらせた。

当たっているだけに、その行くところ敵なしの格好で店も客注買い玉は、ともあれ場ざらしする。

折りから他商品は人気のかげりが見えて、投機資金は草木もなびいて輸大に集中する。

買い玉回転が利いてしかも買い勢力が仕勝っているから、ここは成り行きまかせで逆らわない。

小豆のほうは商いが細った。大阪は三万一千枚の取り組み維持しているが、東穀の取り組みが減ったままである。

産地のお天気がよいので作柄はその後、かなり回復しているという見方と早霜の不安は今後先に行くほど濃くなるから強気のポジション捨てきれずの難しいところ。

当限は下げ幅の三分の二戻し地点。

この9、10、11月限三本には、まだまだ高値の買い玉が辛抱している。勿論12限、1限も高値取り組みだけに、時間をかけながらの玉整理であろう。

●編集部註
 実力でも何でもなく、偶然仕掛けた売り玉や買い玉がすっ天井であったり、ごりごりのど底値であった経験はないだろうか。筆者はある。
 ではその玉で大儲けしたかと問われると、悲しい事にないのである。
 利食いが早まったというだけなら笑い話ですむだろう。しかし、そういう時は大抵はしゃいだ挙句に損で終わっている。
 こういう時に、筆者は色川武大の「9勝6敗を狙え」という言葉を思い出す。「10勝を狙うと無理がでる」というのだ。
 相場に限らず〝ピーク〟に達したら後は堕ちるだけ。故に「幸運が続きすぎると危ない」というのが彼の持論であった。