昭和の風林史(昭和五八年十一月九日掲載分)

相場の流れは下に向いた

小豆はほぼ踏み終わったから崩れに入るところ。年末まで流れに売り玉乗せておく。

小豆に余熱は残っていても、疾風枯葉を巻くような期近限月からの踏み上げ相場は、完全に終わった。

売り玉すでに踏むものは踏んでいる。

今なお踏まずに頑張っている玉は、この先たとえどんなに高くても踏む玉でない。まして上げ相場は建設積み重ねで時間はかかるが下げは破壊。営々と積んできたものを一朝にして崩す。

相場の醍醐味は、苦労の玉がほぐれてきたときが河豚の味。

輸大にしてもそうだった。

追証積んでウンウン唸った玉も煎れ出尽くし万人総強気になったとたん日柄の疲れも出て棒に下げた。

相場とはそんなものである。苦あれば楽あり。

小豆は当たり屋の大衆筋が高値で利食い。さすが小豆マニアは相場巧者だ。金屋筋も小豆はほとんど利食いして輸大買い、粗糖買いの手になったと伝わる。

さて、取り組みのほうが大きくならない。

これがこの相場のキーポイントのような気がする。

期近限月は強烈高をしたけれど先二本でいえば予定のコース。せいぜい行って三千三百円までと見ていた。

だから踏まない。やや安心売りの一、二限。これの煎れがきつかっただけだ。

前二本は触らぬ方針。だから関係ない。

強気は応分の押しを入れて三万五千円(先限)目標を言う。

しかし押しが押しでなく戻り天井打ちという相場になるだろう。

罫線のそれぞれの見方は売りになっている。

人気指数も強気72%までいった。これで先限が先日の窓(大阪二千百三十)を埋め二千円割れに入ってくると判りやすくなる。

産地が突っ張っているとか当限が支えているというものの、こんなのは当てにならない。売り方愁眉を開くところである。

●編集部註
 行間から、当時の自称〝曲がり屋〟風林火山のヒリヒリとした、切迫しつつも織田信長に包囲されて焼き討ちされた恵林寺の快川の如く「心頭滅却すれば火もまた涼し」のような筆致が伝わる。面白いと思う反面、自身も同じような体験をした者には戦慄を覚える。
 穀物相場は現在死に体となっているので、このような生き馬の目を抜くような激しい展開にはならないが、浜の真砂は尽きぬとも世に「取引」の種は尽きまじで、他の商品であったり、株や通貨等の商品でヒリヒリを感じる事は大なり小なり取引参加者は経験。故に、共感が生まれるのだ。