昭和の風林史(昭和五九年三月二一日掲載分)

円の安値をどこに見るか

為替は過去3年の傾向では三月、四月円安という季節変動期に入るわけだが…。

円安分を輸入関連商品は買われた。

円相場は三月7日二二〇円まで急騰したが、その週の週間棒はペナント(三角旗)放れ。しかも空間窓あき。

そして上影、下影に長い髭(ひげ)がある陽線。

さあ、この線を、どう読む?と謎を投げかけた。

先週は上影の長い短陰線で、その前の週の陽線実体の中に孕んだ。

これまた難かしい線。

アメリカは再び高金利傾向。コモディティにきかかっていた資金が逆流する可能性(高金利→ドル高→コモディティ放れ→シカゴ大豆押し目/円安→穀取輸大気迷い)を一応は考えるところ。

月曜は名古屋も雪。大阪も雪。お彼岸に入って梅も咲けず、宙空に舞いかけていた雲雀も姿を消している。

妙なお天気と感じて本来なら小豆(夏の異常気象)や乾繭(遅霜による桑害)など連想するところであるが、全般に商品市場は思惑熱がまだ盛り上がっていない。

ひとり東京銀の取り組みのみ増大する傾向。

『どうすればよいのか?』『飯が食えん』『なぜこんな漠(ばく)とした状況なのか?』『なぜだろう』と取引員経営者も第一線営業部員も、歩合セールスも首をかしげている。

輸入大豆にしても難かしい動きである。

シカゴは七㌦90を戻り頭にして40~50㌣ほど押してもよいところにある。

しかし円安が為替の罫線空間窓を埋める二二九円ないし二三三円あたりまで尾を引くならば、シカゴ安くても穀取輸大は『さあどう考えますか?』と疑問符を投げかけよう。

東京銀にしてもNYコメックス安/円安のバランスをどうとるか。74円20銭以下は東京銀先限買い場と見てもよいと思うが。

●編集部註
 この当時はどうやら季節外れの雪であったらしいが、令和の年度末は満開の桜の中で雪が積もった。加えて市中は新型コロナウィルスの蔓延で人心は疑心暗鬼になっている。さもありなんとしか言いようがない。
 ある意味、ウィルスは平等である。右も左も、上も下も、民族や国籍もお構いなしだ。こういう時のネポティズムやファシズムは、最後の最後で裏目に出ると〝相場〟が決まっている―と、世界史は教えてくれる。
 最近「世界はカミュっぽいのに、日本だけカフカみたいになってる」というツイッターの呟きに唸った。当節、何処かで自分がヨーゼフ・Kやグレゴール・ザムザになるかも知れないという不安感が充満している。