昭和の風林史(昭和五九年三月二九日掲載分)

小豆下げだして若い相場

小豆は当限引き継ぎ線で見ていけば判りやすい。山高ければ谷深し。落花枝に帰らず。

小豆当限受けてどうする。

あとが悪くなるだけだ―というのが市場の常識。買い値コストが安くても、受け代金の金利の時計と倉敷料の針がまわりだす。資金も固定してしまう。

前途は見えているから、すかさず二番限以降が値崩れに入った。

これまで売っては踏み、売っては煎れで、前に回され逆ザヤ納会およそ半年。だから『こんな地合いの悪い相場見たことない』と言いながら売るのが怖い。

結局は(1)自由化問題で弱気した人たちは、この半年間に前(当限)に回され憤死した。(2)58年北海道凶作相場を当限引き継ぎ線で出しきった。(3)今年の天候相場(異常気象を囃す)は買い玉の大掃除を終えて、30㎏建で新しく取り組んでからのこと。

問題は、いつ頃、どのあたりで妥当な値段として落ち着くのか。

先に生まれる九月限の一万五千円台は、倍の値にして考えればよいわけだが、ケイ線の引きかたをどうするか。引き続いて引けば昭和47、48年当時の水準である(注・目で見た線の上では)。それともいちいち倍の値にして引き継いでいくか。ともあれなにか一ツの変わり目である。

北海道の10 11 12月限新穀相場が重要な指標となるから目を離せない。

さて、今の相場を(1)実需さっぱり不振。(2)四、五月需給がゆるむ。(3)買い方は高値で玉がひろがった。(4)下げに入って若い相場。(5)日柄面で春天井した。(6)下げながら取り組み増加は下値が深い。(7)買い玉整理ができていない。(8)天候相場を囃すまでにはまだ二ヵ月の期間がある―。

当限引き継ぎ線で見ていけば判りやすいところである。山高ければ谷深し。無理したとがめは倍になって返ってくるという。

●編集部註

 貴金属と違い農産品の現物ほど恐ろしいものはない。仮に現受けして倉荷証券化しても、需給以外に経年劣化も考えなけれならないからだ。

 相場とは関係ないが、とある青森出身の大物歌手のMCでの鉄板ネタにリンゴの話がある。

 青森の人が本気で怒ると「オメェ、毎日リンゴ送るど」と脅すのだとか。

 最初、言われた側はキ ョトンとするという。むしろ有難い話ではないかと。ただ本当に怖いのは〝毎日〟という所。食べきれずリンゴで部屋が埋め尽くされていくのだ。

 実は、筆者も似たような洗礼を青森で受けた事がある。大量のリンゴは、充分な鈍器となり得る。