昭和の風林史(昭和五九年四月二十一日掲載分)

小豆先を急ぎ早や小走り

小豆七、八限のここからピンで50万円という相場を考えても、それは各人の勝手である。

小豆は今高値に走ることのよし悪しは別にして、売り方が戦線後退(煎れ)の手をふるとただでさえ上昇トレンドの中で満を持している相場だけに人気もついてくる。

様子を見守っていた交易会商談は安値提示→値段引き上げ→量的に多くなさそう→積出し遅れ→輸入商社の価格安定を考慮した調整による巧妙な入荷(値崩れを回避した輸入)など、大型枠決して売り方弱気の援軍ではない。

むしろ逆に(1)現物の売れ行き悪い。(2)大型輸入枠。(3)規制強化傾向などをよりどころに現物筋中心の弱気があとを絶たず、それらの玉が逆境に立つ。

相場は材料を織り込むと、(1)人気であり、(2)勢いであり、(3)先見性が支配するものだ。

四月限にしても五千円の高値を付ける気で買えば、わけはないし、五月限の四千円また抵抗なく付けることのできる取り組みであり線型である。

これが六月限など二千丁下げの二千丁上げ、V型切り返しの力は、買い方が、このまま黙っているだけで倍返し三万五千円もあろうという線型だ。もし、段々期近に回って臨増し規制の強化となっても、臨増し幅を大きくするほどに悲鳴をあげるのは売り玉である。

七限、八限にしても千円から二千円の帯の中で取り組んだあとの一代各新値街道(大阪二千四百円あたりから上)ならば、三千円も相場、四千円も相場というわけである。

まして今年のお天気が怖いわけで、海流(海の潮の流れ)が早くも東北、北海道地方の大冷害を暗示するといわれている。

二年続きの大凶作なら先限二万円を付けても仕方ないということになろうし、七、八月限のここからピンで50万円という相場を夢見るのもロマンの一種だ。

●編集部註

 実際に農業に従事している方々にとっては死活問題なのだが、農産物相場と対峙している方々にとって、天候はある意味相場状況をひっくり返す可能性があるスペクタクルイベントとしてエンターテイメント化しているきらいがある。

 実際、今でもシカゴ市場では農務省発表が相場反転の契機になったりする。この時分に公開された映画「大逆転」でも、オレンジの作付けに関する農務省発表が相場反転の契機となっていた。

 同じような事が、月の初めの週末に発表される米雇用統計にも言える。今はそれほどでもないが、一時、経済専門チャンネルやラジオ番組ではどこもかしこも特番が放送され、数値に一喜一憂し、漫画「インベスターZ」のネタにもされていた。