伊達の薄着ですが、風邪を召されぬように。やせ我慢は粋だと思っている人もいる。
菜畠の霜夜は早し鹿の声 蕪村。
朝寒、夜寒、やや寒、肌寒、うそ寒、そぞろ寒。いろいろな言い方があります。
秋深し隣はなにをする人ぞ 芭蕉。
この句は有名である。
秋が深まれば、冬である。冬は食卓を囲んで家族の夕食。鍋であろうか。一般的にはすき焼き、水炊き。
寒くなるにつれ、白葱がうまくなる。やはり根深汁であろう。食欲の無いときでも、根深汁には箸をつける。
男やもめの一人住まい。ヘルパーさんにときどき粕汁を作ってもらう。
『お燗つけよか、床敷きましょか?』とは言ってくれない。
冬は大根と白葱があれば、用をなす。寒くなるほど、大根も葱も味が増してきます。
琵琶湖の鴨肉などあれば、どんなによいか。
鰹だしと昆布だしで、なんであんなにうまい汁ができるのか。大阪のきつねうどん。
どんな安もののうどん屋できつねうどんを頼んでも味に偽りはない。
東京から新幹線で大阪に帰ってくると、新大阪駅の地下のうどん屋に飛び込む。
ああ、我も大阪人になったか。
関東は、笊蕎麦である。蕎麦の先に、ちょいと汁をつけてすすり込む。落語でやっていた。
つゆをたっぷりつけて食えばうまいのに。
そこが〝粋〟なのである。粋というものはやせ我慢である。
寒いのに、薄着で通す。足袋を履かない“だて”の薄着という。
お腹いっぱい食べるのは野暮という。