高くはならない

相場が高くなるという時代ではない。年内解散だという。次の総理は誰だろう。

歳のせいか、体力が衰えている。寒くなるとそれがよく判る。朝、出掛け前にカイロを二ツに折ってポケットにおさめ、電車の中で握りしめている。

会社に着いて、葛根湯を飲む。

ヘルパーさんが、なにか温かいものを作るという。湯豆腐がいい。老人の好みは豆腐である。

横綱の日馬富士が勝ってよかった。琴欧州も贔屓にしている。

われわれの子供のころは、横綱が四人の時もあった。テレビの無い時代だから、ラジオにかじりついていた。

男女川。羽黒山。安芸の海。照国。照国が好きだったが長くはなかった。

当時はなんといっても双葉山である。

小学校が双葉小学校だったので、わざわざ基隆の小学校まで来てくれた。なにしろ、当時は双葉山の時代であった。

今でも相撲は横になりながらでも、ラジオで聴いている。

その当時、ラジオの安ものは、ビービー雑音がやかましかった。五球スーパというのを買った。内地からの放送なので、アンテナを長く張った。

いまは、テレビの音を消して、テレビの前にラジオを置く。

『お昼は何にしますか』と女の子が訊いてくれる。

特別の注文はない。百貨店の海鮮問屋の寿司が無難。

床の中の電気毛布の目盛りをあげて、葛根湯を飲んでから入る。朝までぐっすりである。

会社の事務所の中に貼ってある、全裸の金髪美女が夢の中に出てくればいいのに、影も見せない。きっと悪いことをされると思っている。