景気も相場も政治もよろしくない。アメリカにガタが来て、日本もガタガタになる。
食欲の無いのを心配して、ヘルパーさんが、ガスコンロの上で温める「キムチ鍋」というものを買ってきた。
うまくも、なんともない。鍋に個性がないのだ。
今日のお昼はガスコンロを出して、湯豆腐にしましょう―と。
男やもめの家では、ヘルパーさんにはご主人がいるので、湯豆腐など囲むわけにはいかない。
暑かったら脱げよといっても、身の堅い人だから肌は見せない。
時々思うのだが、身持ちの悪いヘルパーだと、夏などショートパンツで来られたら往生するだろう。
家の居間に全裸美女のカレンダーを下げる。若いヘルパーさんも来る。しかし、冗談は言えない。『私でよければ脱ぎますよ』と言われる。
いま時の若い女の子には、貞操感はない。ドキンとする言葉が出る。
こちらは八十を過ぎた爺さんだぜ。
薬局で売っている風邪薬を飲んでも、鼻水が止まらない。
早く帰って、電気毛布の目盛りを上げて寝るのがよい。夜中に気がつくと、汗をかいている。これがいけないのである。
事務所の壁の全裸の美女は、寒いといっている。しかし、それは君の商売だろう。そのまま来るなら、お昼の湯豆腐ぐらい御馳走するぜ。
『なかなか来ない金(こん)曜日』も過ぎ、土日に英気を養った。
家の近くに養鶏場があって、生みたての卵が出てくる。それを茹で卵にする。
なにか栄養になるものを食べないと、体は衰弱するばかりだ。